Claim 業務中労災や通勤労災の際の死亡事故について

労災死亡事故は弁護士で変わる

労災死亡事故は弁護士で変わる。

業務中労災や通勤労災の際の死亡事故について 1

業務中労災や通勤労災の際の死亡事故について

業務中労災や通勤労災の際の死亡事故について

労災事案における死亡事故は、現場作業中の事故、過労やハラスメントによる自殺、通勤中の労災事故、加害者のいるケース、加害者がおらず持病に基づくケースなど様々です。
一見すると加害者がいないように見える死亡事故であっても、損害賠償請求が認められることがあります。
例えば、会社の整えていた安全管理体制が不十分であるケースや、被害者の方が過労を毎日強いられていたケースなどが挙げられます。
当事務所では、労災事故の状況のみならず、事故前の被害者の方の状況、会社の管理体制、就業規則などの会社資料や当該業界の資料、裁判例の分析による会社側・加害者側の過失責任・債務不履行責任の調査分析などを通じて、損害賠償請求ができるか否かについて精査していきます。
その結果、損害賠償請求ができると判断された事例においては、お亡くなりになられたご家族の無念さを慰謝料の金額に反映させ、また、ご遺族の苦しみを慰謝料額に反映させ、その他、ご家族が労災被害に遭わずにご存命であったとしたら生涯稼いでいたであろう収入を算定したり、葬儀費用・ご遺族の休業補償の算定をするなど、漏れることなく損害賠償請求をしていきます。
すべてのケースで損害賠償請求ができるわけではありませんが、ご遺族自身では判断するには難しい事柄ですので、まずは被害者側専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

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労災死亡事故における労災申請

(1) 労災死亡事故における労災申請利用のポイント

労災死亡事故において主に関わってくる労災申請は、①遺族(補償)給付、②葬祭給付及び③労災就学等援護費制度の3種類です。
労災事故について会社に責任がない場合や加害者がいない場合、遺族は会社や加害者への損害賠償請求をすることができませんから、①遺族(補償)給付や②葬祭給付の申請を行うことになります。
他方で、会社や加害者に対して損害賠償請求をすることができる場合については、労災申請を行う必要がないかというとそうではありません。
例えば、労災申請による遺族(補償)給付と、損害賠償請求による逸失利益とを二重取りすることはできませんが、会社や加害者との示談・和解の際に「乙は甲に対し、本件労災事故に関して、労働者災害補償保険法に基づく過去及び将来の給付金並びに乙の甲に対する既払金とは別に、解決金として金●●●●万円の支払義務があることを認める。」との条項を入れておけば、会社や加害者に対する損害賠償請求が解決した後の分の遺族(補償)給付を受け取ることができるようになります。
以下では、①遺族(補償)給付と②葬祭給付の内容について説明していきます。
なお、会社や加害者に対して請求できる損害の内容はこちらをご覧ください。

(2) 遺族(補償)給付

被災労働者が業務災害又は通勤災害によって死亡した場合、被災労働者の遺族に対して、遺族(補償)給付がなされます。 具体的には、遺族の身分関係などに応じて、遺族(補償)年金又は遺族(補償)一時金、遺族特別年金又は遺族特別維持金、遺族特別支給金が支払われます。

1:遺族(補償)年金・遺族特別年金・遺族特別支給金

ア 支給要件

遺族(補償)年金・遺族特別年金・遺族特別支給金の受給資格が認められるためには、以下の①及び②の要件を満たすことが必要です(労働災害補償保険法第16条の2)。

労災遺族年金がいつまでもらえるかに関する解説はこちら >>

① 被災労働者が死亡した当時、その収入によって生計を維持していたこと(生活維持関係)

労災認定において生活維持関係が認められるためには、次のような事情があるか否かが重要です。
まず、遺族が被災労働者と現実に同居していた場合は、基本的に生活維持関係が認められます。なお、住民票など書類上の記載ではなく、実際に同居の実態があったかどうかがポイントです。
また、仮に同居していなくても、その遺族と被災労働者の間で生活費や療養費などの経済的な援助(出稼ぎや仕送りなど)が行われていたり、お互い定期的に音信や訪問が行われているなどの事情があれば、生活維持関係が認められる場合があります。
なお、生活維持関係が認められるためには、主として被災死亡労働者の収入によって生計を維持している必要は無く、被災死亡労働者の収入によって生計の一部を維持している共働きの場合も、これに含まれます。

② 被災労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であること

配偶者には、内縁の配偶者を含みます。
逆に、配偶者であっても、長期間別居をしているなど事実上離婚状態にあった配偶者は含まれません。
配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹など受給資格者が複数いる場合は、以下の順番の優先順位があり、順位の高い者が受給権者となります。

1位 妻・60歳以上の夫・障害の状態にある夫
2位 18歳になってはじめて迎える3月31日までの子・障害の状態にある子
3位 60歳以上の父母・障害の状態にある父母
4位 18歳になってはじめて迎える3月31日までの孫・障害の状態にある孫
5位 60歳以上の祖父母・障害の状態にある祖父母
6位 60歳以上の兄弟姉妹・18歳になってはじめて迎える3月31日までの兄弟姉妹・障害の状態にある兄弟姉妹
7位 55歳以上60歳未満の夫
8位 55歳以上60歳未満の父母
9位 55歳以上60歳未満の祖父母
10位 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹

※被災労働者が死亡した時点で60歳に達しておらず上記要件を満たさないという場合は若年停止と呼ばれ、60歳に達すれば支給がなされます。

※受給権者が死亡したり婚姻したりしたため受給権者ではなくなった場合、次の順位の遺族が繰り上がって支給を受けることができるようになります(「転給」といいます。)。

※受給要件に登場する「障害」というのは、①労災保険でいう障害等級5級以上に該当する障害を有している、②ケガや病気が治らないで身体の機能又は精神に高度な制限を受けている若しくは労働に高度な制限があるといった障害を有している場合をいいます。

イ 支給額
遺族数 遺族(補償)年金 遺族特別年金 遺族特別支給金
1人 給付基礎日額の153日分
※55歳以上の妻又は障害状態にある妻の場合は175日分
給付基礎日額の153日分
※55歳以上の妻又は障害状態にある妻の場合は175日分
300万円
2人 給付基礎日額の201日分 給付基礎日額の201日分 300万円
3人 給付基礎日額の223日分 給付基礎日額の223日分 300万円
4人以上 給付基礎日額の245日分 給付基礎日額の245日分 300万円

※給付基礎日額についてはこちらをご覧ください。

遺族(補償)一時金・遺族特別一時金・遺族特別支給金

ア 受給権者

死亡した被災労働者の遺族の中に、遺族(補償)年金を受け取る権利のある遺族がいない場合には、その他の遺族に対して遺族(補償)一時金及び遺族特別一時金が支給されます。
具体的な受給権者の順位は次のとおりです。

1位 配偶者
2位 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
3位 その他の子・父母・孫・祖父母
4位 兄弟姉妹
イ 支給額
遺族(補償)一時金 遺族特別一時金 遺族特別支給金
給付基礎日額の1000日分 給付基礎日額の1000日分 300万円

※給付基礎日額についてはこちらをご覧ください。

(3) 葬祭給付

ア 支給要件

葬儀を執行したことを証明する「葬儀執行証明書」を添付して申請を行います。
現実に要した葬儀費用を明らかにする必要はありませんが、既に実施済みの場合にのみ申請ができ、これから葬儀を実施するという場合には申請ができません。

イ 支給額

①被災労働者の給付基礎日額の60日分と②給付基礎日額の30日分+31万5000円のいずれか高い方の金額とされています。

(4) 労災就学等援護費制度

業務災害又は通勤災害によって死亡した被災労働者の子どもなどの学資等の思弁が困難であると認められる場合、幼稚園・保育園から大学に至るまで、就学等の状況に応じて支給される労災就学等援護費用の制度が定められています。

ア 支給要件

下記①又は②のいずれかの要件を満たすこと。ただし、給付基礎日額が1万6000円を超える場合には支給されなくなります。

  1. ① 遺族(補償)年金の受給権者又はその子どもが、学校や専修学校に在学していたり、公共職業能力開発施設において一定の職業訓練を受けていて、学資等の支弁が困難な場合
  2. ② 遺族(補償)年金の受給権者又はその家族で、就労のために児童を保育所や幼稚園に預けており、その費用を援護する必要があると認められる場合

イ 支給額

子どもが在籍する学校等 子ども1人あたりの支給月額
幼稚園児・保育園児 1万2000円
小学生 1万4000円
中学生 1万8000円
(通信制の場合は1万5000円)
高校生 1万6000円
(通信制の場合は1万3000円)
大学生 3万9000円
(通信制の場合は3万円)

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請求できる損害の内容・金額や請求できる遺族の範囲

(1) 死亡慰謝料・遺族固有の慰謝料

1:はじめに

労災死亡事故の場合、お亡くなりになられてしまったご家族の精神的苦痛の慰謝料請求(民法第709条,民法第710条)と、ご遺族の精神的苦痛の慰謝料請求(民法第711条)をすることができます。
ご家族の方の慰謝料については、相続するご遺族が相続分に従って請求していくことになります。
ご家族の無念を慰謝料として金銭評価するであるとか、遺族の深い悲しみを慰謝料として金銭評価するというのは、本来不可能な作業であり、多額の金額が付けられても納得できないと思います。
ただし、労災死亡事故が起きてしまった以上、慰謝料額の金銭評価をしなければならず、その評価は、これまでの死亡事故の裁判例などから形成されています。
慰謝料相場の中で高水準での解決を目指すとともに、個別事情による慰謝料増額を目指していきます。

1億円超の解決事例をもとにした労災の死亡事故の慰謝料金額に関する解説はこちら >>

以下では、慰謝料の相場や慰謝料請求することのできるご遺族の範囲についてご説明します。
なお、労災申請では慰謝料の支払は一切なされませんので、慰謝料請求をする場合は、会社又は加害者に対する損害賠償請求が必須となります。

2:弁護士に依頼した場合の慰謝料相場

2000万円~2800万円

弁護士に依頼した場合、裁判基準というもので、慰謝料相場を設定することができます。
裁判基準の慰謝料相場は、お亡くなりになられた被害者の方の属性によって分けられていて、①一家の支柱:2800万円、②母親・配偶者:2500万円、③その他:2000万円~2500万円とされています。なお、これらの慰謝料相場は、お亡くなりになられた被害者本人の慰謝料額と、遺族固有の慰謝料額の合計の金額とされています。

①「一家の支柱」とは、「当該被害者の世帯が,主として被害者の収入によって生計を維持している場合をいう」とされています(公益財団法人日弁連労災事故相談センター編「労災事故損害額算定基準-実務運用と解説-」27訂版155頁)。

②「母・配偶者」というのは、お亡くなりになられた方が、母親であったり配偶者であったりした場合です。

③「その他」というのは、上記①及び②以外ということになりますが、学生のお子様がアルバイト中にお亡くなりになられた場合や、高齢者死亡事故がここに該当するものとされています。「その他」は2000万円~2500万円と幅のある相場となっていますが、一般には、学生の場合は高水準になりやすく、高齢者の場合には低水準になりやすいとされています。

3:個別事情によって増額する慰謝料相場

下記のようなケースでは、弁護士に依頼した場合に用いられる裁判基準の慰謝料相場から更に増額します。

ア 加害者の悪質さによる慰謝料増額

加害者の悪質さにより慰謝料相場から増額されるケースとしては、下記のようなものが挙げられます。

  1. ①加害者が故意に(わざと)事故を起こした場合
  2. ②会社や加害者が事故の後に著しく不誠実な態度をとっていた場合
  3. ③会社や加害者が事故後に証拠隠滅を図った場合
イ 被害者本人の無念さによる慰謝料増額

被害者本人の無念さが考慮されて慰謝料相場から増額されるケースとしては、下記のようなものが挙げられます。

・被害者が事故に遭った後に帝王切開で分娩し、その後死亡したケース(横浜地方裁判所平成4年1月30日判決 自保ジャーナル80号2頁)

・被害者が念願の結婚式を挙げたばかりであったケース(東京地方裁判所平成25年12月27日判決 交通事故民事裁判例集第46巻6号1592頁)

ウ 遺族の精神的苦痛の大きさによる慰謝料増額

遺族の精神的苦痛の大きさが考慮されて慰謝料相場から増額されるケースとしては、下記のようなものが挙げられます。裁判例の傾向として、遺族が死亡事故によって精神疾患となっているケースで、慰謝料増額がなされていることが多いです。

・被害者の母が死亡事故を契機としてPTSDに罹患したこと(大阪高等裁判所平成14年4月17日 交通事故民事裁判例集第35巻2号323頁)

・息子を失った母親が、その喪失感等から四十九日を過ぎたころから精神的に不安定となって自殺を図り、精神科に入退院を繰り返し障害等級2級の障害者手帳の交付を受けていること(名古屋地方裁判所平成17年11月30日判決 交通事故民事裁判例集第38巻6号1634頁)

エ 労災事故後しばらくしてお亡くなりになられた場合

労災事故後しばらくしてお亡くなりになられた場合は、労災事故後のお亡くなりになるまでの苦痛などが考慮され、慰謝料増額がなされるケースがあります。そうではなく、傷害慰謝料という名目で別途慰謝料が算定されることもありますが、いずれにしても労災事故後しばらくしてお亡くなりになられた場合、慰謝料総額は増額することが多いです。

傷害慰謝料についての詳細はこちら >>

4:慰謝料請求ができる遺族の範囲

ア 固有の慰謝料請求をすることのできるご遺族の範囲
  1. ① 父母

    民法711条によって認められます。
    なお、父母には養父母を含みます。

  2. ② 配偶者(夫又は妻)

    民法第711条によって認められます。

  3. ③ 内縁の配偶者

    民法第711条の類推適用によって認められます。
    内縁関係が認められるかどうかは、同居の有無、同居期間、同一家計であるか否か、親族や勤務先等対外的社会的に夫婦として扱われていてかどうかといった事情を総合考慮して判断されています。
    なお、内縁の配偶者の固有の慰謝料請求は、他の遺族の慰謝料請求よりも高額となることがほとんどです。
    これは、内縁の配偶者には、相続権が認められないことが理由となっています。

  4. ④ 婚約者

    婚約者というだけでは、原則として固有の慰謝料請求は認められません。
    ただし、死亡事故の際には既に同居を開始していた場合は、固有の慰謝料請求が認められる場合があります(大阪地方裁判所平成27年4月10日判決 自保ジャーナル1952号102頁)。

  5. ⑤ 子

    民法711条によって認められます。
    なお、子には養子、認知した子、胎児を含みます。

  6. ⑥ 未認知の子

    同居して扶養しているといった事情のある場合には、民法711条類推適用によって認められます。

  7. ⑦ 兄弟姉妹

    裁判例では、民法711条類推適用肯定例と否定例に分かれています。
    父母・配偶者・子といった民法711条規定の者と実質的に同視できる身分関係にあったか否かと、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたか否か(最高裁判所昭和49年12月17日判決 最高裁判所判例集28巻10号2040頁参照)が判断のポイントになります。
    当事務所では福岡地方裁判所において兄の近親者慰謝料が認められた例や、大分地方裁判所において妹の近親者慰謝料が認められた例など多数の肯定例があります(否定例はありません。)。

  8. ⑧ 祖父母・孫

    裁判例では、民法711条類推適用肯定例と否定例に分かれています。
    兄弟姉妹と同様、民法711条規定の者と実質的に同視できる身分関係にあったか否かと、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたか否か(最高裁判所昭和49年12月17日判決 最高裁判所判例集28巻10号2040頁参照)が判断のポイントとなっています。
    当事務所では横浜地方裁判所において祖父の近親者慰謝料が認められた例など多数の肯定例があります(否定例はありません。)。

  9. ⑨ 義父母・親代わりの叔父叔母・内縁の配偶者の連れ子

    これも兄弟姉妹や祖父母・孫と同様、民法711条規定の者と実質的に同視できる身分関係にあったか否かと、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けたか否か(最高裁判所昭和49年12月17日判決 最高裁判所判例集28巻10号2040頁参照)が判断のポイントとなっています。

イ 亡くなられた被害者本人の慰謝料請求をすることができるご遺族の範囲

亡くなられた被害者本人の慰謝料については、相続人が請求することができます。なお、慰謝料に限らず、逸失利益など亡くなられた被害者本人に発生する損害はすべて相続人が請求することになります。

(ア)民法による相続人の規定の説明

a 相続人は原則として配偶者と子

民法では、故人の配偶者(夫又は妻)は常に相続人となると規定されています(民法第890条)。
また、故人の子も相続人となると規定されています(民法第886条)。
故人に子がいる場合は、他の親族(父母・祖父母・兄弟姉妹など)が相続人となることは原則としてありません(民法第889条1項参照)。
以上より、相続人となるのは、原則として、配偶者と子ということになります。
なお、故人が労災事故によって死亡したときに胎児であったとしても、その後生まれた子は相続人として扱われます(民法第886条1項)。

b 故人に子がいない場合

故人の子が既に亡くなっている場合は、孫が相続人となります(民法第887条2項)
故人の子も孫も既に亡くなっている場合は、ひ孫が相続人となります(民法第887条3項)。
故人に子・孫・ひ孫がいない場合は、父母が相続人となります(民法第889条1項1号)。
故人に子・孫・ひ孫がおらず、父母もいないが、祖父母はいるという場合は、その祖父母が相続人となります(民法第889条1項1号)。
故人に子・孫・ひ孫がおらず、かつ、父母や祖父母といった直系の先祖(直系尊属といいます。)もいない場合には、兄弟姉妹が相続人となります(民法第889条1項2号)。
故人に子・孫・ひ孫がおらず、かつ、父母や祖父母といった直系の先祖(直系尊属といいます。)もおらず、兄弟姉妹も既に死亡しているという場合で、その死亡した兄弟姉妹に子がいるという場合は、その兄弟姉妹の子が相続人となります(民法第889条2項・第887条2項)。

c 内縁の配偶者や同性のパートナーは相続人となりません

内縁の配偶者や同性のパートナーは、現行法上は相続人とならないとされています。
ただし、民法の改正や判例法理によって、今後これらの者が相続人となることはあり得ますし、そうなっていくのではないかと予想されます。
また、現状、相続が認められないのみであって、内縁の配偶者や同性のパートナーが、亡くなられた被害者に実質扶養されていたような場合には、扶養利益の喪失の損害賠償請求をすることができますし、前述した遺族固有の慰謝料を請求していくこともできます。

(イ)民法による相続分の規定の説明

a 相続人が1人しかいない場合

相続人が1人しかいない場合は、故人に発生した損害賠償請求権のすべてが相続人に承継されます。

b 相続人が配偶者と子の場合

配偶者と子が相続人の場合の相続分は、配偶者50:子50となります(民法第900条1号)。
例えば、子どもが1人の場合は配偶者50:子50となり、子どもが2人の場合は配偶者50:子25:子25となります。
配偶者には半分の相続分があり、残りの半分を子で等しく分けるということになります(民法第900条4号)。

c 相続人が配偶者と直系尊属の場合

配偶者と直系尊属が相続人の場合の相続分は、配偶者2/3・直系尊属1/3となります(民法第900条2号)。
例えば、相続人が配偶者と父といった場合は配偶者2/3・父1/3となり、相続人が配偶者と父母といった場合は配偶者2/3・父1/6・母1/6となります。
配偶者には2/3の相続分があり、残りの1/3を直系尊属で等しく分けるということになります(民法第900条4号)。

d 相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合の相続分は、配偶者3/4・兄弟姉妹1/4となります(民法第900条3号)。
例えば、相続人が配偶者と姉といった場合は配偶者3/4・姉1/4となり、相続人が配偶者と姉弟といった場合は配偶者3/4・姉1/8・弟1/8となります。
配偶者には3/4の相続分があり、残りの1/4を兄弟姉妹で等しく分けるということになります(民法第900条4号)。

e 特別受益と寄与分

相続人の中に、生前の被害者から贈与を受け取っていたなどの特別受益を受けた者がいる時は、特別受益を受けた相続人は、他の相続人よりも相続分が低くされます(民法第903条)。
他方で、相続人の中で、生前の被害者の事業に関して労務を提供したり、療養看護をするなどして、被害者の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者がいる時は、寄与した相続人は、他の相続人よりも相続分が高くされます(民法第904条の2)。

f 相続放棄

相続人の中で、相続放棄をした者は、初めから相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。

(ウ)遺産分割

遺産分割をすることによって、以上の相続分と異なる配分とすることができます。

(エ)遺言と遺留分

被害者が生前遺言を書いていた場合には、その遺言に従うことになります。
ただし、遺言によって法定相続分を承継することができなくなった配偶者や子は、受遺者(遺言によって権利を承継する者)に対して、本来の相続分の1/2を遺留分として請求することができます(民法第1028条2号)。
また、直系尊属のみが相続人である場合は、受遺者(遺言によって権利を承継する者)に対して、本来の相続分の1/3を遺留分として請求することができます(民法第1028条1号)。

(2) 逸失利益(被害者が事故に遭っていなければ稼いでいたであろう損害)

1:逸失利益は最も大事な損害費目と評価できます

死亡事故の場合、今後も仕事をして稼ぎを得ることができたのにそれができなくなった、これまで家事をしてくれていたのに今後それができなくなった、まだ学生だが将来は働いて稼ぎを得るはずだったのにそれができなくなった、といった事情が生じます。
こうした事情を損害賠償請求として表したものを「逸失利益(いっしつりえき)」と呼びます。
逸失利益は、最も高額な損害費目となることも多く、死亡事故の損害賠償請求の中でも大事な要素と位置づけられます。
この逸失利益をどのように算定するかというと、①まず、被害者が死亡しなければその後の就労可能期間において得ることができたと認められる年収(基礎収入といいます。)を算定します。②次に、被害者がまだ存命だったとした場合、収入も得られますが、その分、生活費もかかってくるため、支出されたであろう生活費を控除します。③最後に、何歳まで働いていたかを決め、その年数を掛けます。ただし、一括して賠償金を受け取るため、中間利息の控除というものが行われます。
以上の①~③を計算式に直すと、「基礎収入✕(1-生活費控除率)✕就労可能期間の年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数」となります。
アルバイト学生など若年の被害者の場合ですと、「基礎収入✕(1-生活費控除率)✕(就労可能期間の終期までの年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数-就労開始年齢までの年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数)」という計算式になります。
以下では、①基礎収入、②生活費控除率、③就労可能年数と中間利息控除について、それぞれ詳細解説をしていきます。
なお、逸失利益は、労災申請の遺族(補償)給付に対応します。

2:基礎収入

基礎収入額が400万円になるのか800万円になるのかによって、逸失利益の金額が倍変わってきます。
被害者の方が死亡事故に遭わずに生きていたとしたら、どのくらいの稼ぎがあったのかについては、想像するほかありませんので、立証が難しい側面はありますが、基礎収入額は極めて重要な要素のため、被害者の方の属性に応じた丁寧な立証をしていく必要があります。
以下では、被害者の方の属性ごとに分けて、基礎収入の説明をしていきます。

ア 給与所得者(お給料をもらって働いている人)

原則として、労災事故の前年の年収を基礎収入額とします。
何か事情があって、事故前年の年収が低かったという場合は、その事情を説明して、賃金センサスというものを基礎収入額にすることができる場合があります。

事故前年の年収が250万円弱だったケースにおいて賃金センサスを用いて約550万円の基礎収入額が認定された解決事例 >>

また、労災事故時の年齢が概ね30歳未満の若年労働者の場合も、原則として賃金センサスを基礎収入額とすることができます。

20代被害者の死亡事故で、賃金センサスを用いて約520万円の基礎収入額が認定された解決事例 >>

イ 家事従事者(仕事をしながら家事や介護をしていた人)

家族のために家事や介護をしている人が、パート中やその通勤中に労災事故で死亡した場合、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎とすることができます。
具体的には、平成30年の死亡事故の場合ですと、基礎収入額が382万6300円とされます(他の年の死亡事故の場合でもそこまで大きくは変わりません。)。
この賃金センサスの金額と仕事の収入とのいずれか高い方の金額が基礎収入額とされます。

ウ アルバイト学生

学生がアルバイト中やその通勤中に労災事故で死亡した場合、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別全年齢平均の賃金額を基礎収入額とするとされています。
例えば、平成30年の男の子の死亡事故の場合ですと、基礎収入額は558万4500円とされます(他の年の死亡事故の場合でもそこまで大きくは変わりません。)。
女の子の場合の平成30年賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別全年齢平均の賃金額は382万6300円とされていますが、男の子の場合との金額の差が大きく、時代にそぐわないので、女の子の死亡事故の場合には、男女差をできるだけなくす観点から男女計の賃金センサスを用いる裁判例が増えています(京都地方裁判所平成31年3月22日自保ジャーナル2051号42頁、京都地方裁判所平成28年3月18日判決自保ジャーナル1977号1頁、仙台地方裁判所平成25年3月29日判決自保ジャーナル1906号147頁など多数)。平成30年の男女計の賃金センサスは497万2000円とされています。

エ 高齢者

(ア)仕事での収入分

高齢者であっても、実際に仕事をしていて収入を得ていれば、死亡事故の前年の年収が基礎収入額として認められます。

(イ)同居家族のために家事をしていたり配偶者の介護をしている場合

高齢者であっても、実際に家事や介護をしていれば、家事従事者として逸失利益が認められます。
年齢別の賃金センサスが採用されることが多いですが、多くの家事労働をこなしている場合や、重労働の介護をしている場合などには全年齢の賃金センサスが採用されることがあります。
平成30年の死亡事故の場合ですと、70歳以上の賃金センサスは296万2200円とされていて、全年齢の賃金センサスは382万6300円とされていて、年齢別とされるか全年齢とされるかで大きな差が出てきます。
最近の高齢者は元気ですから、30代主婦などと比較しても、多くの家事労働をこなしているケースも多く、その点をご遺族の話から丁寧に立証をして、全年齢平均賃金での逸失利益を目指していくことが重要です。

(ウ)年金

年金も基本的には逸失利益の基礎収入額として認められます。ただし、遺族年金など被害者の方が保険料を拠出したとは認められないものについては否定される傾向にあります。
具体的には、下記の種類の年金が逸失利益の基礎収入額として裁判例で認められています。

  1. ①国民年金(老齢年金)(最高裁判所平成5月9月21日判決 判例時報1476号120頁)
  2. ②国民年金の振替加算額(東京地方裁判所平成28年10月31日判決交通事故民事裁判例集第49巻5号1320頁、大阪地方裁判所平成30年5月7日判決交通事故民事裁判例集第51巻4号792頁)
  3. ③老齢厚生年金(東京地方裁判所平成13年12月20日判決 交通事故民事裁判例集第34巻6号1651頁)
  4. ④農業年金(経営移譲年金及び農業者老齢年金)(神戸地方裁判所平成18年12月15日判決 交通事故民事裁判例集第39巻6号1756頁)
  5. ⑤地方公務員の退職年金給付(最高裁判所平成5年3月24日判決 判例時報1499号49頁)
  6. ⑥国家公務員の退職年金給付(最高裁判所昭和50年10月24日判決 判例時報798号16頁)
  7. ⑦港湾労働者年金(神戸地方裁判所平成8年12月20日判決 交通事故民事裁判例集第29巻6号1824頁)
  8. ⑧恩給(最高裁判所昭和41年4月7日 判例時報449号44頁)
  9. ⑨国民年金法に基づく障害基礎年金の内の子の加算分を除いた本人分(最高裁判所平成11年10月22日判決 判例時報1692号50頁)
  10. ⑩厚生年金保険法に基づく障害厚生年金の内の妻の加給分を除いた本人分(最高裁判所平成11年10月22日判決 判例時報1692号50頁)
  11. ⑪労働者災害補償法に基づく障害補償年金及び障害特別年金(東京地方裁判所平成7年3月28日判決 判例タイムズ904号184頁)
  12. ⑫私学共済年金(退職年金)(名古屋地方裁判所平成22年5月21日判決 交通事故民事裁判例集第43巻3号657頁)
オ 外国人

外国人労働者の死亡事故の場合は、在留資格によって扱いが変わってきます。

(ア)在留活動に制限がない在留資格がある場合

永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、特別永住者については、日本人とまったく同じに算定することになります。

従いまして、日本で給料を得ている永住者等については「ア 給与所得者」、日本人の夫を持つ外国人妻又は日本人の妻を持つ外国人夫で家事をされている方については「イ 家事従事者」、アルバイト学生の永住者等は「ウ アルバイト学生」、高齢の永住者等は「エ 高齢者」と同じ算定になりますので、各パートの説明を御覧ください。

(イ)就労可能な在留資格を持っている外国人の場合

特殊技能等の就労可能な在留資格がある外国人は、日本において得ていた収入を基礎収入額とします。
ただし、在留期間の定めがありますので、算定の対象期間が在留期間を超える場合には、在留期間が更新される可能性のあることを立証した場合は在留期間以降も日本において得ていた収入を基礎収入額として、そうでない場合は母国の平均収入などを参考に基礎収入額とします。

(ウ)留学生や日本で研修中の外国人

留学生・研修中の外国人の場合、本国の平均収入が参考にされることが多いですが、当該外国人の状況によって個別に判断されます。

  1. ①3か月の研修目的で来日中の韓国国立保健員勤務の獣医の場合 本国での年収(東京地方裁判所平成5年1月28日 判例時報1457号115頁)、
  2. ②中国籍の新聞販売奨学生 5年間は日本での年収、その後3年間は賃金センサス男性学歴計30歳~34歳、その後67歳までは日本の年収の1/3(東京地方裁判所平成9年12月24日判決 交通事故民事裁判例集第30巻6号1832頁)
  3. ③中国籍大学院生 大学院修了後の10年間は賃金センサス男性学歴計全年齢、その後67歳までは賃金センサス男性学歴計全年齢の1/3(東京地方裁判所平成10年3月25日判決 交通事故民事裁判例集第31巻2号441頁)
  4. ④上海留学生 賃金センサス男性高専短大卒全年齢(名古屋地方裁判所平成16年9月29日判決 交通事故民事裁判例集第37巻5号1341頁)
  5. ⑤オーストラリア籍留学生 オーストラリア連邦2004年投影における製造業女性労働者の賃金(大阪地方裁判所平成19年7月12日判決 交通事故民事裁判例集第40巻4号891頁)

3:生活費控除率

被害者がまだ存命だったとした場合、収入も得られますが、その分、生活費もかかってくるため、支出されたであろう生活費を控除することになります。
自身で稼いだ収入をどの程度生活費に回すかは、扶養する者がいるか否かによっても異なってきますので、裁判例の傾向は、概ね下記のようになっています。

ア 被扶養者が1人の場合 生活費控除率40%

1名を扶養しているという場合、稼ぎの内、自分のための生活費として費消した分は40%程度であるとして生活費控除がなされることが多いです。
ただし、被扶養者は1名ですが、その他に相応の扶養の要のある家族がいたようなケースでは、40%よりも低い生活費控除率とされることがあります。
例えば、被扶養者1名で35%の生活費控除率を認めた例として、金沢地方裁判所平成22年8月31日判決(自保ジャーナル1850号68頁)。

イ 被扶養者が2人以上の場合 生活費控除率30%

2名以上を扶養しているという場合、稼ぎの内、自分のための生活費として費消した分は30%程度であるとして生活費控除がなされることが多いです。
離婚をして監護権を有してはいなかったが、別居する子どもたちの養育費を負担するなど別居家族の家計を支えていたというケースでも30%の生活費控除を認めた裁判例もあります(名古屋地方裁判所平成26年12月19日判決 交通事故民事裁判例集第47巻6号1584頁)。

ウ 女性 生活費控除率30%

女性の場合、自分のための生活費として費消した分は30%程度であるとして生活費控除がなされることが多いです。

エ 女子年少者 生活費控除率40%~45%

女子年少者の場合、基礎収入額が賃金センサスの女性平均ではなく、男女平均とされることが多いため(詳しくはこちら)、生活費控除率は40%~45%とする裁判例が多いです。

オ 男性 生活費控除率50%

男性の場合、自分のための生活費として費消した分は50%程度であるとして生活費控除がなされることが多いです。
ただし、結婚を約束していた女性がいたなど、将来一家の支柱となることが具体的に予想できる男性については、生活費控除率が30%~40%程度で算定されることがあります。

独身男性につき生活費控除率が40%とされた解決事例 >>

カ 基礎収入が年金の場合

年金部分については、生活費控除率を通常の場合よりも高くする例が多いです。
ただし、逸失利益性を有しない遺族年金などで生活費を賄えるといった事情がある場合には、生活費控除が行われないこともあります(大阪地方裁判所平成14年4月11日判決 交通事故民事裁判例集35巻2号514頁)。

4:就労可能年数と中間利息控除

ア 就労可能年数
  1. (ア)始期

    原則として、死亡した年が始期となります。
    ただし、高校生アルバイトについては、18歳を始期とすることが多いです。
    学生の場合で、大学卒業を前提として逸失利益を計算する場合は、大学卒業予定の年を始期とします。

  2. (イ)終期

    終期は、原則として67歳までとされています。
    ただし、職種・地位・健康状態・能力等によって、67歳を超える期間が終期とされることがあります。例えば、開業医や医学部生の場合70歳まで、税理士の場合75歳までとされた裁判例があります(京都地方裁判所平成7年12月21日判決自保ジャーナル1146号2頁、京都地方裁判所平成12年3月23日判決判例時報1758号108頁、大阪地方裁判所平成22年3月11日判決自保ジャーナル1840号57頁)。
    高齢者が元気な時代ですから、今後は例外の裁判例が多く登場していく可能性があり、もしくは、終期67歳という原則自体が変更になる可能性があります。
    67歳を超える人については、簡易生命表の平均余命の1/2が就労可能年数とされます。
    67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の1/2より短くなる人についても、簡易生命表の平均余命の1/2が就労可能年数とされます。
    年金の逸失利益については、簡易生命表の平均余命となります。

イ 中間利息控除

逸失利益というのは、故人が将来長期間にかけて取得するはずであった利益を、現在の一時金としてまとめて支給するものなので、本来ならばただちに手に入らないはずの金銭を受領して利息を得ることができるのは不公平な結果となるという理屈から控除がなされるものです。
具体的には、法定利率での利息を得ることができるだろうと考えられていて、その分が引かれることになっています。
例えば、令和2年4月1日、年収700万円の50歳会社員(妻・子2人あり)が死亡事故に遭ったという場合、生活費控除率30%、就労可能年数を17年として計算すると、700万円✕(1-0.3)✕17年=8330万円が逸失利益ということになりますが、これはもらいすぎであると考えられています。
具体的には、就労可能年数の17年をそのまま乗じるのではなく、中間利息控除が行われますので、17年に対応するライプニッツ係数13.1661年分の賠償金(700万円✕(1-0.3)✕13.1661=6451万3890円)をもらえば、17年間法定利率3%で運用することにより17年後に8330万円になると考えられています。
なお、民法改正により令和2年4月1日以降と、令和2年3月31日以前とで、法定利率が異なっていますので、それに伴って中間利息控除の係数であるライプニッツ係数も変わってきます。

【ライプニッツ係数(年金現価表)】

就労可能年数 令和2年4月1日以降の
労災事故
令和2年3月31日以前の
労災事故
1 0.9709 0.9524
2 1.9135 1.8594
3 2.8286 2.7232
4 3.7171 3.5460
5 4.5797 4.3295
6 5.4172 5.0757
7 6.2303 5.7864
8 7.0197 6.4632
9 7.7861 7.1078
10 8.5302 7.7217
11 9.2526 8.3064
12 9.9540 8.8633
13 10.6350 9.3936
14 11.2961 9.8986
15 11.9379 10.3797
16 12.5611 10.8378
17 13.1661 11.2741
18 13.7535 11.6896
19 14.3238 12.0853
20 14.8775 12.4622
21 15.4150 12.8212
22 15.9369 13.1630
23 16.4436 13.4886
24 16.6967 13.7986
25 17.4131 14.0939
26 17.8768 14.3752
27 18.3270 14.6430
28 18.7641 14.8981
29 19.1885 15.1411
30 19.6004 15.3725
31 20.0004 15.5928
32 20.3888 15.8027
33 20.7658 16.0025
34 21.1318 16.1929
35 21.4872 16.3742
36 21.8323 16.5469
37 22.1672 16.7113
38 22.4925 16.8679
39 22.8082 17.0170
40 23.1148 17.1591
41 23.4124 17.2944
42 23.7014 17.4232
43 23.9819 17.5459
44 24.2543 17.6628
45 24.5187 17.7741
46 24.7754 17.8801
47 25.0247 17.9810
48 25.2667 18.0772
49 25.5017 18.1687
50 25.7298 18.2559
51 25.9512 18.3390
52 26.1662 18.4181
53 26.3750 18.4934
54 26.5777 18.5651
55 26.7744 18.6335
56 26.9655 18.6985
57 27.1509 18.7605
58 27.3310 18.8195
59 27.5058 18.8758
60 27.6756 18.9293
61 27.8404 18.9803
62 28.0003 19.0288
63 28.1557 19.0751
64 28.3065 19.1191
65 28.4529 19.1611
66 28.5950 19.2010
67 28.7330 19.2391
68 28.8670 19.2753
69 28.9971 19.3098
70 29.1234 19.3427
71 29.2460 19.3740
72 29.3651 19.4038
73 29.4807 19.4322
74 29.5929 19.4592
75 29.7018 19.4850
76 29.8076 19.5095
77 29.9103 19.5329
78 30.0100 19.5551
79 30.1068 19.5763
80 30.2008 19.5965
81 30.2920 19.6157
82 30.3806 19.6340
83 30.4666 19.6514
84 30.5501 19.6680
85 30.6312 19.6838
86 30.7099 19.6989

(3) 葬儀費用・墓石建立費など

一般に、葬儀(訪問客の接待も含みます。)やその後の法要(四十九日・百日の法要等)・供養等を執り行うためにする費用、仏壇、仏具購入費、墓碑建立費等については、150万円の範囲内で賠償を認めるという取扱いがなされています(なお、事例によっては、150万円以上の葬儀費用が認められることもあります。)。
総額が150万円に満たない場合には、現実の支出額の全額が認められます。
葬儀費用等の総額にかかわらず、遺体搬送料など葬儀を行わなくてもかかる費用については、葬儀費用とは別に損害として認められることになっています。
なお、葬儀費用は、労災申請の葬祭給付に対応します。

(4) 駆けつけ費用

家族の病院への駆け家族の病院への駆けつけ費用や、遠方の家族の葬儀参加のための費用などが認められることがあります。
当事務所では、東京―福岡間の遺族の駆けつけ費用や法事参加のための交通費として約10万円が認められた解決事例がございます。
つけ費用や、遠方の家族の葬儀参加のための費用などが認められることがあります。

(5) 遺族の治療費や休業損害

故人の治療費や休業損害ではなく、遺族の治療費や休業損害のため、これを認めるべきではないとする裁判例や学説も存在します。
しかしながら、森冨義明・村主隆行編編『交通関係訴訟の実務』161頁以下古市文孝裁判官「間接損害の諸問題2(被害者の近親者の損害)」によると、「原則否定説に立って近親者の治療費・休業損害等を一切認めないというのは,明解ではあるものの,やや硬直的な考えであるとも思われます。」とされていて、詳細な立証により、相当因果関係のある損害として認められることがあります。
京都地方裁判所平成31年3月22日判決(自保ジャーナル2051号42頁)は、子の死亡により経営する飲食店を休業した父の休業損害について、子が死亡した父の悲しみは深いものであり、相応の期間の休業はやむを得なかったものと認められるとして、1.2か月間の休業損害(本来得られるはずの利益に加えて家賃・従業員給与・駐車場料金を加算した金額)を認めています。
また、遺族の心療内科治療費を認めた裁判例も複数存在します(名古屋地方裁判所平成14年12月3日判決交通事故民事裁判例集第35巻6号1604頁、東京地方裁判所平成15年2月25日判決自保ジャーナル1511号18頁、東京地方裁判所平成19年12月17日判決交通事故民事裁判例集第40巻6号1619頁、横浜地方裁判所平成23年10月18日判決判例時報2131号86頁など)。

父親の休業損害として約200万円が認められた解決事例 >>

(6) 事故後しばらくしてお亡くなりになられた場合の損害

事故後しばらくしてお亡くなりになられたという場合は、その間、下記のような様々な損害が発生し、これらも損害賠償として認められることになります。

1:治療費

必要かつ相当な実費全額が認められます。
治療費については、事故後すぐにお亡くなりになられた場合でも当然に全額認められることが多いです。
労災保険でいうと、療養(補償)給付によって治療費が支払われることになります。

2:入院付添費

被害者が入院している間の、家族の付添い費用が認められることがあります。
入院付添費は、日額6500円というのが裁判の一般的な基準とされていますが(東京地方裁判所平成25年3月7日判例タイムズ1394号50頁など)、症状の程度によって1割~3割の範囲で増額が考慮されることがあります(7150円~8450円)。

3:付添人交通費

入院付添費が認められる場合、付添いをする家族の病院までの交通費が認められます。

4:入院雑費

入院1日につき1500円が入院雑費として認められています。

5:休業損害

被害者が労災事故後死亡するまでの間に得られなくなった収入について休業損害として請求をすることができます。
なお、有給休暇を使用している場合には、現実に収入減がなかったとしても、有給消化分を休業損害として請求することができます。
また、家事従事者についても、逸失利益と同様、休業損害が認められることが多いです。
労災保険でいうと、休業(補償)給付によって休業損害の支払がなされることになり、労災申請をしていた方の場合、会社や加害者へ休業損害の請求ができないように思われますが、これは誤りです。
事案により異なりますが、概ね、労災から休業(補償)給付を受けていた方であっても、休業損害の4割を会社や加害者へ請求していくことができます。

6:傷害慰謝料

被害者が労災事故後死亡するまでの間の精神的苦痛の慰謝料も、死亡慰謝料とは別に請求することができます。
裁判例の傾向としては、入院期間を主たる判断材料として慰謝料計算をすることが多く、裁判基準としては下記のように考えられています。

入院1か月 53万円
入院2か月 101万円
入院3か月 145万円
入院4か月 184万円
入院5か月 217万円
入院6か月 244万円
入院7か月 266万円
入院8か月 284万円
入院9か月 297万円
入院10か月 306万円
入院11か月 314万円
入院12か月 321万円
入院13か月 328万円
以降1か月ごとに 6万円加算

死亡事故の場合、傷害の程度が著しいことがほとんどですので、上記の裁判基準の傷害慰謝料額から更に20~30%以上の増額がなされることがあります。

(7) 損害賠償関係費用その他

その他の損害としては、下記のようなものがあります。

  1. (1)死亡診断書・カルテなどの文書料
  2. (2)医師の意見書代(水戸地方裁判所下妻支部平成20年2月29日判決 自保ジャーナル1743号7頁)
  3. (3)刑事記録取得費用(東京地方裁判所平成22年12月15日判決自保ジャーナル1844号114頁、大阪地方裁判所平成26年3月20日判決自保ジャーナル1927号118頁)
  4. (4)事故鑑定のための鑑定料(東京地方裁判所八王子支部平成10年9月21日判決 交通事故民事裁判例集第31巻5号1430頁)
  5. (5)労災事故によって無駄になってしまった支払済みの教育費や旅行代金など

    1. ①授業料及び教材費約50万円と、通学定期代約3万円(東京地方裁判所平成6年9月29判決日 交通事故民事裁判例集第27巻5号1329頁)
    2. ②旅行キャンセル料(大分地方裁判所平成6年9月30日判決交通事故民事裁判例集第27巻5号1363頁、東京地方裁判所平成12年10月4日判決交通事故民事裁判例集第33巻5号1603頁、東京地方裁判所平成15年9月2日判決交通事故民事裁判例集第36巻5号1192頁、大阪地方裁判所平成16年12月7日判決自保ジャーナル1605号2頁、名古屋地方裁判所平成26年4月22日判決自保ジャーナル1924号23頁)
    3. ③自動車教習所代32万円全額(東京高等裁判所平成14年6月18日判決 交通事故民事裁判例集第35巻3号631頁)
    4. ④大学半期授業料等(名古屋地方裁判所平成17年11月30日判決交通事故民事裁判例集第38巻6号1634頁、東京地方裁判所平成22年10月13日判決交通事故民事裁判例集第43巻5号1287頁)
    5. ⑤コンサートキャンセル料(横浜地方裁判所平成23年6月16日判決 自保ジャーナル1866号47頁)
    6. ⑥大学入学金25万円(東京地方裁判所平成24年11月28日判決 交通事故民事裁判例集第45巻6号1388頁)
    7. ⑦通うことのできなくなったスポーツクラブ会費(東京地方裁判所平成25年7月16日判決 交通事故民事裁判例集第46巻4号915頁)
    8. ⑧礼金及び前払い家賃(大阪地方裁判所平成30年4月16日判決 自保ジャーナル2068号95頁)
  6. (6)労災事故によって本来かかっていなかった費用や労働が発生した場合

    1. ①介護する家族が労災事故に遭ってしまい、費介護者を介護施設に入れざるを得なくなった場合の介護施設料やベッドレンタル代(横浜地方裁判所平成5年9月2日判決交通事故民事裁判例集第26巻5号1151頁、大阪地方裁判所平成27年3月3費判決自保ジャーナル1948号106頁)
    2. ②労災事故により世話ができなくなったペットの預け費用(横浜地方裁判所平成6年6月6日判決交通事故民事裁判例集第27巻3号744頁、京都地方裁判所平成15年1月31日判決自保ジャーナル1485号23頁、大阪地方裁判所平成20年9月8日判決交通事故民事裁判例集第41巻5号1210頁)

(8) 物損や着衣・携行品損害

1:物損

ア 車両損害

通勤災害において車両損害が出た場合で、修理が相当な場合は、適正修理費相当額が認められます。
ただし、修理費が、車両時価額に買替諸費用を加えた額を上回る場合には、修理費は認められず、車両時価額に買替諸費用を加えた金額のみが認められることになります。
また、修理不能な場合も、車両時価額に買替諸費用を加えた金額が認められることになります。

イ 評価損

修理しても外観や機能に欠陥を生じ、または事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合は、評価損が認められます。

2:着衣・携行品損害

被害者が着ていた衣服、携行品(カバンやスマートフォンなど)に損傷がある場合、その損害についても賠償請求することができます。

(9) 遅延損害金

事故の日から遅延損害金が発生します。
その利率については、令和2年3月31日までの事故の場合は5%とされています。
令和2年4月1日以降の利率は、事故日によって異なるとされています(民法第404条3項)。
なお、令和2年4月1日から令和5年3月31日までの労災事故の場合は3%と決まっています(民法第404条2項)

(10) 弁護士費用

民事訴訟を提起すると、判決で認容された損害額の10%程度が弁護士費用の損害として更に認定されます。
遺族が外国人で日本語を十分に理解しないために相当な時間と労力を費やすようなケースでは、10%以上の金額が弁護士費用として認定されることがあります(東京地方裁判所平成12年7月8日判決 交通事故民事裁判例集第33巻4号1270頁など)。
なお、裁判で認定された弁護士費用は、実際依頼する弁護士に支払う弁護士費用とは別物です。

当事務所にご依頼いただく場合の弁護士費用については、こちらをご覧ください >>

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。