Fee 労災事故で請求できる損害

労災の慰謝料額・給付金・賠償額は弁護士で変わります。

労災事故の慰謝料額・賠償額は弁護士で変わります。

労災事故で請求できる損害

  1. 労災申請の種類
    1. 労災申請利用のポイント
    2. 療養(補償)給付
    3. 休業(補償)給付
    4. 障害(補償)給付
    5. 介護(補償)給付
    6. 労災就学等援護費制度
  2. 会社や加害者に請求できる損害の内容と解説
  3. 慰謝料
    1. 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
    2. 後遺症慰謝料
    3. 慰謝料増額事由
  4. 休業損害
    1. 給与所得者(正社員・派遣社員・アルバイトなど)
    2. 家事従事者(家族のために家事や介護をしている方)
  5. 逸失利益
    1. 逸失利益は最も大事な損害費目と評価できます
    2. 基礎収入
    3. 労働能力喪失率
    4. 労働能力喪失期間と中間利息控除
  6. 治療関係費
    1. 治療費
    2. 整骨院・接骨院、鍼灸、あんま、マッサージ、指圧など病院以外の治療関係費について
  7. 交通費
    1. 通院交通費
    2. 将来の通院交通費
    3. 付添人交通費
    4. 見舞いのための交通費や駆けつけ費用
    5. 通勤交通費
  8. 入院雑費
  9. 損害賠償関係費用その他
  10. 物損や着衣・携行品損害
    1. 物損
    2. 着衣・携行品損害
  11. 遅延損害金
  12. 弁護士費用
  13. 近親者の慰謝料
  14. 症状固定後の治療費・将来の治療費
  15. 付添看護費用(入院付添費・通院付添費・自宅付添費)
    1. 入院付添費
    2. 通院付添費
    3. 自宅付添費
  16. 将来介護費
  17. 将来雑費(今後ずっと支出していくことになるおむつ代など)
  18. 装具・器具等購入費
  19. 家屋改造費・自動車改造費・転居費用等
  20. 後見等関係費用
  21. よくある質問

労災事故で請求できる損害 1

労災申請の種類

(1) 労災申請利用のポイント

労災事故について会社に責任がない場合や加害者がいない場合、被害者は会社や加害者への損害賠償請求をすることができませんから、労災申請によって被害回復を図ることになります。
他方で、会社や加害者に対して損害賠償請求をすることができる場合については、労災申請を行う必要がないかというとそうではありません。
例えば、労災申請による障害(補償)給付と、損害賠償請求による逸失利益とを二重取りすることはできませんが、会社や加害者との示談・和解の際に「乙は甲に対し、本件労災事故に関して、労働者災害補償保険法に基づく過去及び将来の給付金並びに乙の甲に対する既払金とは別に、解決金として金●●●●万円の支払義務があることを認める。」との条項を入れておけば、会社や加害者に対する損害賠償請求が解決した後、障害(補償)給付を受け取ることができるようになります。
また、被害者にも過失があるケースでは、会社や加害者から治療費や休業損害を支払ってもらうよりも、労災から給付を受けた方が被害者の受け取るトータルの金額は高くなります。
加えて、労災には特別支給金という制度もあり、支給を受けたとしても損害賠償請求との二重取りと判断されない支給金もあります。
以上のとおり、会社や加害者へ損害賠償請求ができるケースであっても、労災申請を利用した方が良いケースというのは多く存在します。
以下では、労災申請の種類それぞれについて、説明をしていきます。
なお、会社や加害者に対して請求できる損害の内容はこちらをご覧ください。

(2) 療養(補償)給付

1:支給内容

療養(補償)給付は、被災労働者の傷病等に対する治療費及び関連費用が基本的に全額支給されます。支給される内容には以下のようなものがあります。

  1. ① 治療費
  2. ② 薬代
  3. ③ 手術費用
  4. ④ 自宅療養の場合の看護費など
  5. ⑤ 入院中の看護費など
  6. ⑥ 入通院のための交通費・移送費

支給を受けられるかどうかは、傷病等の性質に応じて、一般的に治療効果があるとされているかどうかによって決まります。

2:受給方法

ア 労災指定医療機関の治療の場合

労災指定医療機関で治療等を受けた場合、当該医療機関に労災請求用紙を提出すれば、無料で治療を受けることができます(5号請求と呼ばれます。)。

イ 労災指定医療機関以外での治療の場合

労災指定医療機関で治療等を受けた場合、当該医療機関に労災請求用紙を提出すれば、無料で治療を受けることができます(5号請求と呼ばれます。)。

3:アフターケア制度

症状固定後の治療費は原則として支払われませんが、アフターケア制度を利用できる場合、症状固定後の治療費も労災保険によって支払ってもらうことができます。
対象の傷病は、①せき髄損傷、②頭頸部外傷症候群等(頭頸部外傷症候群・頸肩腕障害・腰痛)、③尿路結石、④慢性肝炎、⑤白内障等の眼疾患、⑥振動障害、⑦大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折、⑧人工関節・人工骨頭置換、⑨慢性化膿性骨髄炎、⑩虚血性心疾患等、⑪尿路系腫瘍、⑫脳の器質性障害、⑬外傷による末梢神経損傷、⑭熱傷、⑮サリン中毒、⑯精神障害、⑰循環器障害、⑱呼吸機能障害、⑲消火器障害、⑳炭鉱災害による一酸化炭素中毒が挙げられます。

(3) 休業(補償)給付

1:支給要件

  1. ① 業務災害又は通勤災害によって治療を受けていること
  2. ② 当該傷病によって労働ができないこと(軽作業であれば働けるという場合は該当しません。)
  3. ③ ②のために賃金を受けていないこと
    ※被災労働者が休業(補償)給付受給中に退職したとしても、支給要件を満たしていれば、退職後も休業(補償)給付が支払われます(労働者災害補償保険法第12条の5)。

2:受給方法

休業(補償)給付は、所定の請求用紙(様式第8号)に必要事項を記載して労働基準監督署へ提出する方法で請求します(8号請求と呼ばれます。)。
その際、請求用紙に療養のために休業が必要であることについての当該傷病の主治医に証明印を押捺してもらう必要があります。

3:支給額

休業(補償)給付は、給付基礎日額の60%に休業特別支給金として20%が加わり、合計給付基礎日額の80%が支給されます。

※給付基礎日額の説明はこちらをご覧ください。

なお、休業初日から3日間は、休業(補償)給付は支給されず、事業主に支払義務があります(労働基準法第76条1項)。

(4) 障害(補償)給付

業務災害又は通勤災害による傷病について治療を続けてきた被災労働者が症状固定の状態に至り、後遺症を残存させた場合、その障害の等級に応じて、障害(補償)年金、障害(補償)一時金、障害特別年金、障害特別一時金、障害特別支給金が支給されます。

障害等級 障害(補償)年金又は一時金 障害特別年金又は一時金 障害特別支給金
第1級 毎年
給付基礎日額の313日分
毎年
給付基礎日額の313日分
一回
342万円
第2級 毎年
給付基礎日額の277日分
毎年
給付基礎日額の277日分
一回
320万円
第3級 毎年
給付基礎日額の245日分
毎年
給付基礎日額の245日分
一回
300万円
第4級 毎年
給付基礎日額の213日分
毎年
給付基礎日額の213日分
一回
264万円
第5級 毎年
給付基礎日額の184日分
毎年
給付基礎日額の184日分
一回
225万円
第6級 毎年
給付基礎日額の156日分
毎年
給付基礎日額の156日分
一回
192万円
第7級 毎年
給付基礎日額の131日分
毎年
給付基礎日額の131日分
一回
159万円
第8級 一回
給付基礎日額の503日分
一回
給付基礎日額の503日分
一回
65万円
第9級 一回
給付基礎日額の391日分
一回
給付基礎日額の391日分
一回
50万円
第10級 一回
給付基礎日額の302日分
一回
給付基礎日額の302日分
一回
39万円
第11級 一回
給付基礎日額の223日分
一回
給付基礎日額の223日分
一回
29万円
第12級 一回
給付基礎日額の156日分
一回
給付基礎日額の156日分
一回
20万円
第13級 一回
給付基礎日額の101日分
一回
給付基礎日額の101日分
一回
14万円
第14級 一回
給付基礎日額の56日分
一回
給付基礎日額の56日分
一回
8万円

※給付基礎日額の説明はこちらをご覧ください。

(5) 介護(補償)給付

1:支給要件

  1. ① 障害(補償)年金又は傷病(補償)年金を受給していること
  2. ② 受給している年金で認定された等級が1級又は2級であること
  3. ③ 現に介護を受けていること
  4. ④ 身体障害者療養施設、老人保健施設、特別養護老人ホーム、原子爆弾被爆者特別養護ホーム、労災特別介護施設のいずれにも入所していないこと

2:支給額

現実に介護費を支出 親族による介護
常時介護を要する場合(1級) 支出額
(月上限10万4290円)
一律月5万7030円
随時介護を要する場合(2級) 支出額
(月上限5万2480円)
一律月2万8520円

(6) 労災就学等援護費制度

業務災害又は通勤災害によって重度の障害を受け又は長期療養が必要となった被災労働者本人で、その子どもなどの学資等の思弁が困難であると認められる場合、幼稚園・保育園から大学に至るまで、就学等の状況に応じて支給される労災就学等援護費用の制度が定められています。

1:支給要件

障害等級1級~3級のケースの場合で、下記①又は②のいずれかの要件を満たすこと。ただし、給付基礎日額が1万6000円を超える場合には支給されなくなります。

  1. ① 被災労働者本人又はその子どもが、学校や専修学校に在学していたり、公共職業能力開発施設において一定の職業訓練を受けていて、学資等の支弁が困難な場合
  2. ② 被災労働者本人又はその家族で、就労のために児童を保育所や幼稚園に預けており、その費用を援護する必要があると認められる場合

2:支給額

障害等級1級~3級のケースの場合で、下記①又は②のいずれかの要件を満たすこと。ただし、給付基礎日額が1万6000円を超える場合には支給されなくなります。

  1. ① 被災労働者本人又はその子どもが、学校や専修学校に在学していたり、公共職業能力開発施設において一定の職業訓練を受けていて、学資等の支弁が困難な場合
  2. ② 被災労働者本人又はその家族で、就労のために児童を保育所や幼稚園に預けており、その費用を援護する必要があると認められる場合
子どもが在籍する学校等 子ども1人あたりの支給月額
幼稚園児・保育園児 1万2000円
小学生 1万4000円
中学生 1万8000円
(通信制の場合は1万5000円)
高校生 1万6000円
(通信制の場合は1万3000円)
大学生 3万9000円
(通信制の場合は3万円)

労災事故で請求できる損害 2

会社や加害者に請求できる損害の内容と解説

労災事故で請求できる損害 3

慰謝料

慰謝料

慰謝料というのは、被害者の被った精神的・肉体的苦痛による損害(非財産的損害)をてん補するものです(民法第710条)。
もともと裁判官の裁量が大きい損害項目であり、その性質上、出捐や事故前の現実収入のような算定の基礎とするものもないため、定額化が最初に行われた損害項目となっています。
従いまして、労災事故から一般的に生じる精神的苦痛(日常生活や就労における苦痛、治療を余儀なくされる苦痛、事故当事者として紛争解決に関わらなければならない苦痛など)は、通常は基準額で評価されていると扱われることになります。
逆を言えば、当該事故から通常考えられる精神的損害を超えるものが発生していることを裏付ける事実を具体的に主張・立証していけば、裁判基準より更なる増額も可能となるということです。
慰謝料は、人身事故の場合に必ず発生する入通院慰謝料(傷害慰謝料)と、後遺症が残ってしまった場合に発生する後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)の2つがあります。
後遺症が残ってしまった場合には、入通院慰謝料(傷害慰謝料)と後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)の2つの慰謝料を請求できるということになります。
被害者が重度の後遺症を負ってしまった場合には、近親者も慰謝料の請求をすることができます。
これについては、重度障害特殊の損害のパートをご覧ください。
ここでは、入通院慰謝料(傷害慰謝料)後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)慰謝料増額事由について説明していきます。
なお、労災申請では慰謝料の支払いは一切なされないことになっていますので、慰謝料請求をするには会社又は加害者に対して、損害賠償請求をしていくことが必須となります。

(1) 入通院慰謝料(傷害慰謝料)

1:裁判基準の慰謝料相場

裁判基準の慰謝料相場は、軽傷かどうかによって分けられています。
神経根症型やせき髄症型ではない単なるむち打ちの場合や、軽い打撲・軽い挫傷・軽い挫創の場合は、低い慰謝料相場とされ、それ以外の場合は高い慰謝料相場が適用されます。

原則的な入通院慰謝料相場(単位:万円)
通院\入院 0か月 1か月 2か月 3か月 4か月 5か月 6か月 7か月 8か月 9か月 10か月 11か月 12か月 13か月 14か月 15か月
0か月 0 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1か月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2か月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3か月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4か月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5か月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6か月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346 352
7か月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344 348 354
8か月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341 346 350 356
9か月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338 343 348 352 358
10か月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335 340 345 350 354 360
11か月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332 337 342 347 352 356 362
12か月 154 183 211 236 260 280 298 314 326 334 339 344 349 354 358 364
13か月 158 187 213 238 262 282 300 316 328 336 341 346 351 356 360 366
14か月 162 189 215 240 264 284 302 318 328 338 343 348 353 358 362 368
15か月 164 191 217 242 266 286 304 320 332 340 345 350 355 360 364 370

※入院16か月以降は、6万円ずつ加算

※通院16か月以降は、2万円ずつ加算

※なお、大阪地方裁判所や名古屋地方裁判所では別の慰謝料基準が採用されていますが、大きな金額の差はありません。

他覚所見のないむち打ち・軽い打撲・軽い挫傷・軽い挫創の入通院慰謝料相場
通院\入院 0か月 1か月 2か月 3か月 4か月 5か月 6か月 7か月 8か月 9か月 10か月 11か月 12か月 13か月 14か月 15か月
0か月 0 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1か月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2か月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3か月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4か月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5か月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6か月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229 234
7か月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225 230 235
8か月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219 226 231 236
9か月 109 129 147 158 169 178 185 191 197 202 208 214 220 227 232 237
10か月 113 133 149 159 170 179 186 192 198 203 209 215 221 228 233 238
11か月 117 135 150 160 171 180 187 193 199 204 210 216 222 229 234 239
12か月 119 136 151 161 172 181 188 194 200 205 211 217 223 230 235 240
13か月 120 137 152 162 173 182 189 195 201 206 212 218 224 231 236 241
14か月 121 138 153 163 174 183 190 196 202 207 213 219 225 232 237 242
15か月 122 139 154 164 175 184 191 197 203 208 214 220 226 233 238 243

※入院16か月以降は、5万円ずつ加算

※通院16か月以降は、1万円ずつ加算

※なお、大阪地方裁判所や名古屋地方裁判所では別の慰謝料基準が採用されていますが、大きな金額の差はありません。

2:入通院慰謝料(傷害慰謝料)の詳細解説

ア 原則は高い基準を用います

裁判基準の慰謝料相場には2つの表がありますが、原則は高い方の基準を用います。
例外的に低い基準を用いるケースというのは、神経根症型やせき髄症型などではない単純なむち打ちの場合や、軽い打撲・軽い挫傷・軽い挫創の場合です。

イ 入通院慰謝料増額事由
  1. ①自宅療養中は入院期間と扱われることがあります

    入院待機中の期間や、ギプス固定中など安静を要する自宅療養期間は、慰謝料の算定上は、実際は入院していなくても入院期間とみることがあります。
    当事務所の弁護士の解決事例でも、実際入院していない期間を入院期間とする慰謝料算定に成功した事例が複数あります。

  2. ②被害者側の事情による入院期間を短縮させた場合の慰謝料増額

    被害者が幼児を持つ母親であったり、仕事などの都合で特に入院期間を短縮したと認められる場合には、入通院慰謝料金額が増額されることがあります。

  3. ③傷害の部位・程度による増額

    傷害の部位・程度によっては、慰謝料額が20%~30%増額されます。
    例えば、大腿骨の複雑骨折又は粉砕骨折や、せき髄損傷を伴うせき柱の骨折などは苦痛や身体の拘束が強い症状とされていますので、慰謝料の増額がなされやすいと思われます。
    また、脳やせき髄の損傷、多数の箇所にわたる骨折、内臓破裂を伴う傷害の場合も、通常生命の危険があることが多く、慰謝料の増額がなされやすいと思われます。

  4. ④手術関係による増額

    生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術など極度の苦痛を被ったとき、手術を繰返したときなどは、入通院期間の長短にかかわらず別途慰謝料増額を考慮するとされています。

  5. ⑤その他裁判例に見る個別事情による増額

    • 3年以上にわたる入院後離婚(600万円認定。東京地方裁判所平成14年4月16日判決 交通事故民事裁判例集第35巻2号518頁)
    • 選挙立候補断念(50万円加算。横浜地方裁判所平成23年12月21日判決 交通事故民事裁判例集第44巻6号1611頁)
    • 通院期間4か月だが多発性肋骨骨折のため介護職の就労に制限があり退職(160万円認定。名古屋地方裁判所平成28年2月19日判決 交通事故民事裁判例集第4巻1号219頁)
  6. ⑥他の損害費目の否定又は制限による慰謝料増額

    例えば、整骨院施術費が全部又は一部否定されるなど、慰謝料以外の他の損害費目が否定/制限される場合、その補完調整機能として慰謝料が増額されることがあります。

  7. ⑦加害者側の事情による増額

    これについては、後遺症慰謝料の増額事由ともなりますので、こちらをご覧ください。

ウ 通院慰謝料減額事由

通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3.5倍(軽症の場合は3倍)程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもあるとされています。
例えば、骨折をしてしまい、月1回のペースで20か月間通院したとします。
20か月間の通院慰謝料は172万円とされていますが、長期通院であるとして上記の減額をされてしまう場合は、実通院日数20回×3.5倍=70日(2か月10日)の通院期間分の慰謝料まで減額されてしまい、通院慰謝料額は60万円程度まで減額されてしまいます。
あくまで減額の目安であって、必ず減額するというルールではありませんので、20か月間の苦痛の程度などを立証し、減額されないような活動をしていかなければなりません。
なお、具体的に何か月が「長期」にあたるのかについての基準はありませんが、『交通事故損害額算定基準‐実務運用と解説‐』を参考に考えると、1年以上の通院が「長期」と評価されやすくなるものと思われます。

(2) 後遺症慰謝料

1:裁判基準

後遺症慰謝料は、障害等級ごとの慰謝料基準が存在します。

14級慰謝料 110万円
13級慰謝料 180万円
12級慰謝料 290万円
11級慰謝料 420万円
10級慰謝料 550万円
9級慰謝料 690万円
8級慰謝料 830万円
7級慰謝料 1000万円
6級慰謝料 1180万円
5級慰謝料 1400万円
4級慰謝料 1670万円
3級慰謝料 1990万円
2級慰謝料 2370万円
1級慰謝料 2800万円

2:後遺症慰謝料の増額事由

ア 労働能力喪失の程度が障害等級に比して大きい場合

障害等級の認定がなされた場合、その認定等級に応じた労働能力喪失率が定められています(労働省労働基準局長通牒昭和32年7月2日基発第551号)。
例えば、障害等級14級の認定がなされた場合の労働能力喪失率は5%とされています。
親指以外の手指の指骨を失った場合は、障害等級14級6号が認定されますが、プロのピアニストが労災事故に遭い、この障害等級認定を受けた場合には、労働能力喪失率は5%では収まらないことになりそうです。 このようなケースでは、後遺症慰謝料も増額される傾向にあります。

イ 労働労力喪失の程度が障害等級に比して小さい場合

アとは逆に、労働労力喪失の程度が障害等級に比して小さい場合、逸失利益を減額する代わりに、後遺症慰謝料額を増額して、全体の損害額を調整することがあります。
具体的には、体幹骨の変形、歯牙障害、醜状障害などの後遺症の場合、仕事への支障の程度が明らかでなく、労働能力喪失率が基準よりも減らされ、逸失利益が減額されることがあり、このようなケースで、後遺症慰謝料額が増額されることがあります。

ウ 障害等級認定に至らない後遺症の評価

2本の歯牙障害、てのひら大には至らない上肢下肢の醜状障害など障害等級は非該当であるが、後遺症が残っているといったケースでは、当該事情を考慮して後遺症慰謝料が算定されることがあります。

エ 他の損害費目の否定又は制限による慰謝料増額

例えば、将来治療費の全部又は一部否定されるなど、慰謝料以外の他の損害費目が否定/制限される場合、その補完調整機能として慰謝料が増額されることがあります。

オ 加害者側の事情による増額

これについては、入通院慰謝料の増額事由ともなりますので、こちらをご覧ください。

(3) 慰謝料増額事由

下記のようなケースでは、弁護士に依頼した場合に用いられる裁判基準の入通院慰謝料相場や後遺症慰謝料相場から更に増額します。
具体的には、加害者の悪質さにより慰謝料相場から増額されるケースとして、下記のようなものが挙げられます。

  1. ①加害者が故意に(わざと)事故を起こした場合
  2. ②会社や加害者が事故の後に著しく不誠実な態度をとっていた場合
  3. ③会社や加害者が事故後に証拠隠滅を図った場合

労災事故で請求できる損害 4

休業損害

休業損害

休業損害は、被害者の属性によって判断基準が異なります。

(1) 給与所得者(正社員・派遣社員・アルバイトなど)

事故後仕事を休んだ場合、休業損害を請求していくことになります。
なお、労災に休業(補償)給付の申請をしていたとしても、更に会社や加害者に対して休業損害の損害賠償請求をしていくことできます。
事案によって異なりますが、おおまかにいうと、休業(補償)給付で得られた金額(特別支給金を含む。)の半額を、さらに会社や加害者に対して請求することができます。
s また、給料の減収の他に、賞与の減額分についても会社や加害者に請求していくことができます。

(2) 家事従事者(家族のために家事や介護をしている方)

年収350万円程度以下で、かつ、ご家族の家事又は介護もしているという方は、仕事を休んだことによる休業損害よりも、家事ができなくなった/しづらくなったことによる休業損害を請求した方が、賠償額が高くなることが多いです。

家事ができなくなった/しづらくなったことにより、もらえる損害額

ア 骨折で長期入院をするなど重傷のケース

労災被害に遭った年にもよりますが、治療期間中1日あたり1万円を少し超える金額が認められます。
例えば、労災被害により丸々1年間治療をして、その間家事ができなかったという場合は、400万円弱の休業損害が認められることになり ます。

イ むち打ちなど重傷とはいえないが症状が残ってしまったケース

むち打ちなど重傷とはいえないが症状が残ってしまったケースというのは、家事が不可能になるというわけではなく、家事がしづらくなるということになります。
そのため、(ア)の重傷のケースと異なり、治療期間中100%の休業損害までは認められないことが多いです。
事案によって異なりますが、相場としては50万円以上を目標にすることが多いです。

ウ 症状が残らず完治したケース

症状が残らず完治したというケースでも、完治に至るまでは痛みなどの症状が出ていたはずですので、その間の家事のしづらさの休業損害を請求していくことになります。
おケガの内容や、どのくらいの治療期間で完治したのかなどによって、休業損害の金額は異なってきます。
相場としては30万円程度が目安になりますが、事案によってこれよりも低くなることもあれば、高くなることもあります。

男性であっても主夫休業損害が認められます

近年、男は外に出て、女は家にいるという昭和以前の価値観に変化が見られ、男性であっても家事を行っているというケースが増えてきています。
従いまして、従来の裁判例の傾向よりも、今後は男性の主夫としての休業損害が認められやすくなっていくものと思われます。
この場合、同居の奥様やお子さんの収入資料などがあると、男性の主夫としての休業損害が認められやすくなります。

家事ではなく家族の介護をしているという場合でも休業損害は認められます

家事ではなく家族の介護をしているという場合でも休業損害は認められます。 この場合、介護が必要なご家族の方の診断書などを取り付けることによって休業損害を請求していきます。

労災事故で請求できる損害 5

逸失利益

逸失利益

(1) 逸失利益は最も大事な損害費目と評価できます

労災被害で後遺症を残してしまった場合、今後も仕事をして稼ぎを得ることができたのにそれがしづらくなった/できなくなったという事態が生じます。
こうした事情を損害賠償請求として表したものを「逸失利益(いっしつりえき)」と呼びます。
逸失利益は、最も高額な損害費目となることも多く、慰謝料と並び損害賠償請求の中でも大事な要素と位置づけられます。
この逸失利益をどのように算定するかというと、①まず、被害者に後遺症がなければ今後得ることができたと認められる年収(基礎収入といいます。)を算定します。②次に、障害等級に応じた労働能力の喪失率を乗じます。③最後に、何歳まで働いていたかを決め、その年数を掛けます。ただし、一括して賠償金を受け取るため、中間利息の控除というものが行われます。
以上の①~③を計算式に直すと、「基礎収入✕労働能力喪失率✕労働能力喪失期間の年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数」となります。
学生アルバイトなど若年の被害者の場合ですと、「基礎収入✕労働能力喪失率✕(労働能力喪失期間の終期までの年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数-就労開始年齢までの年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数)」という計算式になります。
以下では、①基礎収入、②労働能力喪失率、③就労可能年数と中間利息控除について、それぞれ詳細解説をしていきます。
なお、逸失利益は、労災申請の中の障害(補償)給付に対応します。

(2) 基礎収入

基礎収入額が400万円になるのか800万円になるのかによって、逸失利益の金額が倍変わってきます。
被害者の方が労災事故に遭わずに後遺症なく生きていたとし
たら、どのくらいの稼ぎがあったのかについては、想像するほかありませんので、立証が難しい側面はありますが、基礎収入額は極めて重要な要素のため、被害者の方の属性に応じた丁寧な立証をしていく必要があります。 以下では、被害者の方の属性ごとに分けて、基礎収入の説明をしていきます。

ア 給与所得者(お給料をもらって働いている人)

原則として、事故前年の年収を基礎収入額とします。
何か事情があって、労災事故の前年の年収が低かったという場合は、その事情を説明して、賃金センサスというものを基礎収入額にすることができる場合があります。

事故前年の年収が約260万円だったケースにおいて、将来の昇給の蓋然性を立証し、賃金センサスを用いて約664万円の基礎収入額が認定された解決事例 >>

また、労災事故時の年齢が概ね30歳未満の若年労働者の場合も、原則として賃金センサスを基礎収入額とすることができます。

イ 家事従事者(家族の家事や介護をしている人など)

仕事もしているが家族の家事や介護をしている人が労災被害で後遺症を残してしまった場合、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎とすることができます(最高裁判所昭和49年7月19日判決 判例時報748号23頁)。
具体的には、平成30年の症状固定の場合ですと、基礎収入額が382万6300円とされていて(他の年の場合でもそこまで大きくは変わりません。)、この金額と事故前年の年収とのいずれか高い方を基礎収入額として請求していきます。

ウ 学生アルバイト

学生が労災被害に遭い後遺症を残してしまった場合、賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別全年齢平均の賃金額を基礎収入額とするとされています。
例えば、平成30年症状固定の男の子の労災事故の場合ですと、基礎収入額は558万4500円とされます(他の年の場合でもそこまで大きくは変わりません。)。
女の子の場合の平成30年賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別全年齢平均の賃金額は382万6300円とされていますが、男の子の場合との金額の差が大きく、時代にそぐわないので、女の子の労災被害の場合には、男女差をできるだけなくす観点から男女計の賃金センサスを用いる裁判例が増えています。平成30年の男女計の賃金センサスは497万2000円とされています。

エ 公務員

公務員の場合、労災被害に遭い後遺症を残してしまったとしても、それが理由で給料が支給されないということは原則としてありません。
従いまして、減収がないことを理由に、加害者や国・地方公共団体から逸失利益を支払わないと言われてしまうことがあります。
しかしながら、公務員の方であっても、後遺症を残してしまえば、労災被害前と比較して働きづらくなることがあるのは当然で、場合によっては、昇格や昇給遅れの原因にもなり得ます。
当事務所の弁護士の扱った事例では、公務員であることを理由に逸失利益が否定されたことはありません。

オ 外国人

外国人が労災事故で後遺症となってしまった場合は、在留資格によって扱いが変わってきます。

(ア)在留活動に制限がない在留資格がある場合

永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、特別永住者については、日本人とまったく同じに算定することになります。
従いまして、日本で給料を得ている永住者等については「給与所得者」、家族のための家事や介護をされている方については「家事従事者」、学生アルバイトは「学生アルバイト」、公務員は「エ 公務員」と同じ算定になりますので、各パートの説明を御覧ください。

(イ)就労可能な在留資格を持っている外国人の場合

特殊技能等の就労可能な在留資格がある外国人は、日本において得ていた収入を基礎収入額とします。
ただし、在留期間の定めがありますので、算定の対象期間が在留期間を超える場合には、在留期間が更新される可能性のあることを立証した場合は在留期間以降も日本において得ていた収入を基礎収入額として、そうでない場合は母国の平均収入などを参考に基礎収入額とします。

(ウ)留学生や日本で研修中の外国人

留学生・研修中の外国人の場合、本国の平均収入が参考にされることが多いですが、当該外国人の状況によって個別に判断されます。

  1. ①3か月の研修目的で来日中の韓国国立保健員勤務の獣医の場合 本国での年収(東京地方裁判所平成5年1月28日 判例時報1457号115頁)、
  2. ②中国籍の新聞販売奨学生 5年間は日本での年収、その後3年間は賃金センサス男性学歴計30歳~34歳、その後67歳までは日本の年収の1/3(東京地方裁判所平成9年12月24日判決 交通事故民事裁判例集第30巻6号1832頁)
  3. ③中国籍大学院生 大学院修了後の10年間は賃金センサス男性学歴計全年齢、その後67歳までは賃金センサス男性学歴計全年齢の1/3(東京地方裁判所平成10年3月25日判決 交通事故民事裁判例集第31巻2号441頁)
  4. ④上海留学生 賃金センサス男性高専短大卒全年齢(名古屋地方裁判所平成16年9月29日判決 交通事故民事裁判例集第37巻5号1341頁)/3(東京地方裁判所平成10年3月25日判決 交通事故民事裁判例集第31巻2号441頁)
  5. ⑤オーストラリア籍留学生 オーストラリア連邦2004年投影における製造業女性労働者の賃金(大阪地方裁判所平成19年7月12日判決 交通事故民事裁判例集第40巻4号891頁)/3(東京地方裁判所平成10年3月25日判決 交通事故民事裁判例集第31巻2号441頁)

(3) 労働能力喪失率

ア 障害等級に応じた労働能力喪失率

障害等級の認定がなされた場合、その認定等級に応じた労働能力喪失率が定められています(労働省労働基準局長通牒昭和32年7月2日基発第551号)。

1級 2級 3級 4級 5級 6級 7級 8級 9級 10級 11級 12級 13級 14級
100% 100% 100% 92% 79% 67% 56% 45% 35% 27% 20% 14% 9% 5%

イ 労働能力喪失率表よりも高い労働能力喪失率が認定されるケース

示談交渉においても、裁判においても、労働能力喪失率は労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発第551号)別表労働能力喪失率表を参考に定められることになっていますが、①被害者の職業、②年齢、③性別、④後遺症の部位、⑤後遺症の程度、⑥事故前後の稼働状況などを総合的に判断して、例外的に労働能力喪失率表よりも高い労働能力喪失率が認められることがあります。
当事務所の弁護士の解決事例でも、多くの事例で労働能力喪失率表よりも高い労働能力喪失率が認められた事例があります。

ウ 労働能力喪失率表よりも低い労働能力喪失率が認定されるケース

示談交渉においても、裁判においても、労働能力喪失率は労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発第551号)別表労働能力喪失率表を参考に定められることになっていますが、①被害者の職業、②年齢、③性別、④後遺症の部位、⑤後遺症の程度、⑥事故前後の稼働状況などを総合的に判断して、例外的に労働能力喪失率表よりも低い労働能力喪失率が認定されてしまうケースがあります。
例えば、歯が無くなってしまった場合、顔にキズが残ってしまった場合、体幹骨が変形してしまった場合などが挙げられます。
実際の身体の動きに支障がないため、労働能力は喪失していないのではないかという問題意識です。
これらのケースの場合、相手方は労働能力喪失率表よりも低い労働能力喪失率を主張してくることが多く、裁判所も同様の判断をすることがあります。
しかしながら、歯がなくなると歯を食いしばることに支障が生じる、顔にキズが残り精神的ストレスがかかり対人の仕事が困難になる、腰椎圧迫骨折により腰の痛みや多少の可動域制限を伴っているなど、立証の仕方によっては、労働能力喪失率算定表どおりの労働能力喪失率を守れることもあります。

歯牙障害の詳細についてはこちらをご覧ください >>

醜状障害についてはこちらをご覧ください >>

せき柱変形障害についてはこちらをご覧ください >>

(4) 労働能力喪失期間と中間利息控除

ア 労働能力喪失期間

(ア)始期

症状固定日が始期となります。
ただし、高校生アルバイトについては、18歳を始期とすることが多いです。
学生の場合で、大学卒業を前提として逸失利益を計算する場合は、大学卒業予定の年を始期とします。

(イ)終期

終期は、原則として67歳までとされています。
ただし、職種・地位・健康状態・能力等によって、67歳を超える期間が終期とされることがあります。
高齢者が元気な時代ですから、今後は例外の裁判例が多く登場していく可能性があり、もしくは、終期67歳という原則自体が変更になる可能性があります。
67歳を超える人については、簡易生命表の平均余命の1/2が労働能力喪失期間とされます。
67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の1/2より短くなる人についても、簡易生命表の平均余命の1/2が労働能力喪失期間とされます。

イ 中間利息控除

逸失利益というのは、被害者が将来長期間にかけて取得するはずであった利益を、現在の一時金としてまとめて支給するものなので、本来ならばただちに手に入らないはずの金銭を受領して利息を得ることができるのは不公平な結果となるという理屈から控除がなされるものです。
具体的には、法定利率での利息を得ることができるだろうと考えられていて、その分が引かれることになっています。
例えば、令和2年4月1日、年収700万円の50歳会社員(妻・子2人あり)が労災被害に遭い、障害等級10級10号の後遺症を残したという場合、労働能力喪失率27%、労働能力喪失期間を17年として計算すると、700万円✕0.27✕17年=3213万円が逸失利益ということになりますが、これはもらいすぎであると考えられています。
具体的には、労働能力喪失期間の17年をそのまま乗じるのではなく、中間利息控除が行われますので、17年に対応するライプニッツ係数13.1661年分の賠償金(700万円✕0.27✕13.1661=2488万3929円)をもらえば、17年間法定利率3%で運用することにより17年後に3213万円になると考えられています。
なお、民法改正により令和2年4月1日以降と、令和2年3月31日以前とで、法定利率が異なっていますので、それに伴って中間利息控除の係数であるライプニッツ係数も変わってきます。

ライプニッツ係数(年金現価表)
労働能力喪失期間 令和2年4月1日以降の
労災事故
令和2年3月31日以前の
労災事故
1 0.9709 0.9524
2 1.9135 1.8594
3 2.8286 2.7232
4 3.7171 3.5460
5 4.5797 4.3295
6 5.4172 5.0757
7 6.2303 5.7864
8 7.0197 6.4632
9 7.7861 7.1078
10 8.5302 7.7217
11 9.2526 8.3064
12 9.9540 8.8633
13 10.6350 9.3936
14 11.2961 9.8986
15 11.9379 10.3797
16 12.5611 10.8378
17 13.1661 11.2741
18 13.7535 11.6896
19 14.3238 12.0853
20 14.8775 12.4622
21 15.4150 12.8212
22 15.9369 13.1630
23 16.4436 13.4886
24 16.6967 13.7986
25 17.4131 14.0939
26 17.8768 14.3752
27 18.3270 14.6430
28 18.7641 14.8981
29 19.1885 15.1411
30 19.6004 15.3725
31 20.0004 15.5928
32 20.3888 15.8027
33 20.7658 16.0025
34 21.1318 16.1929
35 21.4872 16.3742
36 21.8323 16.5469
37 22.1672 16.7113
38 22.4925 16.8679
39 22.8082 17.0170
40 23.1148 17.1591
41 23.4124 17.2944
42 23.7014 17.4232
43 23.9819 17.5459
44 24.2543 17.6628
45 24.5187 17.7741
46 24.7754 17.8801
47 25.0247 17.9810
48 25.2667 18.0772
49 25.5017 18.1687
50 25.7298 18.2559
51 25.9512 18.3390
52 26.1662 18.4181
53 26.3750 18.4934
54 26.5777 18.5651
55 26.7744 18.6335
56 26.9655 18.6985
57 27.1509 18.7605
58 27.3310 18.8195
59 27.5058 18.8758
60 27.6756 18.9293
61 27.8404 18.9803
62 28.0003 19.0288
63 28.1557 19.0751
64 28.3065 19.1191
65 28.4529 19.1611
66 28.5950 19.2010
67 28.7330 19.2391
68 28.8670 19.2753
69 28.9971 19.3098
70 29.1234 19.3427
71 29.2460 19.3740
72 29.3651 19.4038
73 29.4807 19.4322
74 29.5929 19.4592
75 29.7018 19.4850
76 29.8076 19.5095
77 29.9103 19.5329
78 30.0100 19.5551
79 30.1068 19.5763
80 30.2008 19.5965
81 30.2920 19.6157
82 30.3806 19.6340
83 30.4666 19.6514
84 30.5501 19.6680
85 30.6312 19.6838
86 30.7099 19.6989

労災事故で請求できる損害 6

治療関係費

治療関係費

労災保険でいうと、治療関係費は療養(補償)給付に対応します。

(1) 治療費

必要かつ相当な実費全額が認められます。
治療費の相当性については、高額診療・過剰診療として問題となるケースがありますが、病院での治療ではほとんど問題となりません。

(2) 整骨院・接骨院、鍼灸、あんま、マッサージ、指圧など
病院以外の治療関係費について

症状により有効かつ相当な場合、ことに医師の指示がある場合などは認められる傾向にあるとされています。
病院での治療費については、治療期間について争われることはあるものの、治療内容について必要性・有効性などが争われることは少ないですが、整骨院・接骨院、鍼灸、あんま、マッサージ、指圧など病院以外の治療類似行為については現れることが多いです。
医師の指示がポイントとなってくるため、仕事の都合などで整形外科に通いづらく整骨院に通いたいという方については、その旨、整形外科医に話をして、指示や同意を取り付けることが重要となってきます。
ただし、東洋医学について理解のある医師もいますが、整骨院など医療類似行為を認めていませんと宣言される医師もいます。
このような場合には、医師の指示や同意を取り付けることは不可能に近いです。
では、医師の指示や同意のない場合には、整骨院・接骨院、鍼灸、あんま、マッサージ、指圧など病院以外の施術費は認められないかというと、そういうわけではありません。
医師の指示や同意のない場合、保険会社や保険会社の顧問弁護士は、これ見よがしに施術費を否定してきますが、東洋医学については「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」及び「柔道整復師法」により法的に免許制度が確立されたものですから、医師の指示や同意のない限り施術の必要性が認められないということはありません。
実際、優秀な柔道整復師などの先生は多くいらっしゃいますし、施術効果があがっている事例も多いです。
鍼灸治療に関していえば、病院においてもペインクリニックが鍼灸治療を用いているなど、その治療法が全国的に普及・一般化してきているともいえ、医師の指示や同意がなくとも労災事故との相当因果関係が認められるべきケースというのは多々あります。
医師の指示・同意を取り付けることがまず大事ではありますが、これが取り付けられなかった場合には、施術期間・施術内容・施術費の相当性などについて具体的に主張立証をしていくことになります。
なお、施術期間については、整骨院・接骨院は6か月程度、鍼灸は12か月程度が目安とされています。

労災事故で請求できる損害 7

交通費

交通費

(1) 通院交通費

1:タクシー通院の注意点

駅・病院までの距離、代替交通機関の存否、年齢などにより相当とされる場合を除いて、通院の際のタクシー代は認められないのが原則とされています。

2:電車・バス通院の注意点

通院の際の電車料金やバス料金が否定されるということは、滅多にありません。
電車代やバス代の領収証を保管しておく必要も、原則としてありません。
否定されるケースというのは、おそらく交通費の問題ではなく、治療の必要性について争点となっているケースだと思われます。

3:自家用車・バイクでの通院の注意点

自家用車で通院をするといった場合、1㎞あたり15円計算で交通費が支払われることになっています。
この金額自体が争いになることはなく、ガソリン代の領収証などを保管しておく必要もありません。
ただし、通院の際に駐車場料金が発生したという場合には、駐車場の領収証が必要となってきますので、駐車場の領収証については保管しておいていただけると弁護士としては助かります。

(2) 将来の通院交通費

重度の後遺症が残ってしまい、症状固定後も通院が必要と判断される場合には平均余命までの将来治療費が認められることになっています。
将来治療費が認められる場合は、将来治療する際にかかる通院交通費も認められます。
将来治療費については、こちらをご覧ください。

(3) 付添人交通費

近親者が入院に付添い看護している場合、付添人が病院へ訪れる際の交通費も、被害者本人の損害として認められることになっています。
また、通院に付添い看護している場合も、被害者本人の交通費のみならず、付添人の交通費も被害者本人の損害として認められることになっています。
入通院付添費については、こちらをご覧ください。

(4) 見舞いのための交通費や駆けつけ費用

入院看護ではなく、見舞いのために近親者が病院へ行った際の交通費も認められることがあります。
子どもが入院している場合や、被害が重大な場合に認められる傾向にあります。

(5) 通勤交通費

労災被害前は電車・バス・自家用車などで通勤していたが、足のケガなどにより従来の通勤方法では通勤できなくなり、タクシーを利用して通勤したという場合、このタクシー代が損害として認められることがあります。

労災事故で請求できる損害 8

入院雑費

入院雑費

労災被害に遭い入院してしまったという場合、入院中の寝具・衣類・洗面具・食器等の日用品雑貨費の支出を余儀なくされたり、他にも、入院の報告や家族との連絡などのための電話代、新聞雑誌代・テレビ賃借料などの文化費など細々とした支出を余儀なくされることが多いです。
労災被害による損害賠償というのは、損害の裏付けとなる証拠を被害者の方で準備して、1つ1つ立証していくのが原則となっていますが、上記の入院中の雑費を1つ1つ個別に立証し、その相当性を判断していくというのは、著しく手間であるし、実益に乏しいことから、一般的に、入院雑費は日額1500円と定額化されています。
従いまして、入院していたことの立証さえ行えばよく、レシートなどを一々保管しおく必要はありません。
ただし、日額1500円以上の請求をしていくという場合は、証拠が必要となってきますので注意が必要です。

労災事故で請求できる損害 9

損害賠償関係費用その他

損害賠償関係費用その他

損害賠償関係費用その他の損害としては、下記のようなものがあります。

  1. 1:診断書・カルテなどの文書料
  2. 2:医師の意見書代(水戸地方裁判所下妻支部平成20年2月29日判決 自保ジャーナル1743号7頁)
  3. 3:刑事記録取得費用(東京地方裁判所平成22年12月15日判決自保ジャーナル1844号114頁、大阪地方裁判所平成26年3月20日判決自保ジャーナル1927号118頁)
  4. 4:事故鑑定のための鑑定料(東京地方裁判所八王子支部平成10年9月21日判決 交通事故民事裁判例集第31巻5号1430頁)
  5. 5:労災被害によって無駄になってしまった支払済みの教育費や旅行代金など

    1. ①旅行キャンセル料
      (大分地方裁判所平成6年9月30日判決交通事故民事裁判例集第27巻5号1363頁、東京地方裁判所平成12年10月4日判決交通事故民事裁判例集第33巻5号1603頁、東京地方裁判所平成15年9月2日判決交通事故民事裁判例集第36巻5号1192頁、大阪地方裁判所平成16年12月7日判決自保ジャーナル1605号2頁、名古屋地方裁判所平成26年4月22日判決自保ジャーナル1924号23頁)
    2. ②自動車教習所代32万円全額
      (東京高等裁判所平成14年6月18日判決 交通事故民事裁判例集第35巻3号631頁)
    3. ③コンサートキャンセル料
      (横浜地方裁判所平成23年6月16日判決 自保ジャーナル1866号47頁)
    4. ④通うことのできなくなったスポーツクラブ会費
      (東京地方裁判所平成25年7月16日判決 交通事故民事裁判例集第46巻4号915頁)
    5. ⑤礼金及び前払い家賃
      (大阪地方裁判所平成30年4月16日判決 自保ジャーナル2068号95頁)
  6. 6:労災被害によって本来かかっていなかった費用や労働が発生した場合

    1. ①介護する家族が労災被害に遭ってしまい、被介護者を介護施設に入れざるを得なくなった場合の介護施設料やベッドレンタル代
      (横浜地方裁判所平成5年9月2日判決交通事故民事裁判例集第26巻5号1151頁、大阪地方裁判所平成27年3月3費判決自保ジャーナル1948号106頁)
    2. ②労災被害により世話ができなくなったペットの預け費用
      (横浜地方裁判所平成6年6月6日判決交通事故民事裁判例集第27巻3号744頁、京都地方裁判所平成15年1月31日判決自保ジャーナル1485号23頁、大阪地方裁判所平成20年9月8日判決交通事故民事裁判例集第41巻5号1210頁)

労災事故被害で請求できる損害 10

物損や着衣・携行品損害

着衣・携行品損害

(1) 物損

ア 車両損害

通勤災害において車両損害が出た場合で、修理が相当な場合は、適正修理費相当額が認められます。
ただし、修理費が、車両時価額に買替諸費用を加えた額を上回る場合には、修理費は認められず、車両時価額に買替諸費用を加えた金額のみが認められることになります。
また、修理不能な場合も、車両時価額に買替諸費用を加えた金額が認められることになります。

イ 評価損(格落ち損)

修理しても外観や機能に欠陥を生じ、または事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合は、評価損が認められます。
考慮要素としては、①初年度登録からの期間、②走行距離、③損傷の部位、④事故車両の人気度合い、⑤購入時の価格、⑥中古車市場での通常価格などが挙げられます。
傾向としては、外車又は国産人気車種の場合、初年度登録から5年以内・走行距離6万㎞以下だと評価損が認められやすい傾向にあります。
その他の車種の場合は、初年度登録から3年以内・走行距離4万㎞以下だと評価損が認められやすい傾向にあります。
評価損の金額は、修理費の10%~30%とされることが多く、新車購入した間もない事故の場合はさらに増額される傾向にあります。

ウ 代車使用料

相当な修理期間または買替期間中、レンタカーの使用などにより代車を利用した場合に認められます。
部品の調達や営業車登録などの必要があるときは長期間の代車使用が認められることがありますが、そのような事情が無い限り、裁判所の代車使用認定期間は短めとなりますので、早めに代車は返還した方が良いといえます。

(2) 着衣・携行品損害

被害者が着ていた衣服、携行品(カバンやスマートフォンなど)に損傷がある場合、その損害についても賠償請求することができます。

労災事故被害で請求できる損害 11

遅延損害金

遅延損害金

労災被害の日から遅延損害金が発生します。
その利率については、令和2年3月31日までの労災事故の場合は5%とされています。
令和2年4月1日以降の利率は、事故日によって異なるとされています(民法第404条3項)。
なお、令和2年4月1日から令和5年3月31日までの労災事故の場合は3%と決まっています(民法第404条2項)

労災事故被害で請求できる損害 12

弁護士費用

弁護士費用

民事訴訟を提起すると、判決で認容された損害額の10%程度が弁護士費用の損害として更に認定されます。
なお、裁判で認定された弁護士費用は、実際依頼する弁護士に支払う弁護士費用とは別物です。

当事務所にご依頼いただく場合の弁護士費用については、こちらをご覧ください

Damage 重度障害特殊の損害

労災事故被害で請求できる損害 13

近親者の慰謝料

近親者の慰謝料

ご家族が労災被害によって重傷・重体となってしまった場合、死亡事故の場合にも比肩し得べき精神上の苦痛を受けたときは、民法第709条,710条に基づいて、ご家族自身が近親者慰謝料を請求できるとされています(最高裁判所昭和33年8月5日判決 最高裁判所民事判例集第12巻12号1901頁)。
重度後遺障害の場合に認められやすい損害といえます。
当事務所の弁護士の解決事例でも、障害等級2級の高次脳機能障害のケースにおいて、被害者本人の慰謝料のほかに、夫・子ども2人・父母の計5名の近親者慰謝料が認められたケースがあります。

労災事故被害で請求できる損害 14

症状固定後の治療費・将来の治療費

症状固定後の治療費・将来の治療費

症状固定とされた場合、これ以上治療しても症状は改善せず、後遺症として残ってしまうとの判断がされたということですから、症状固定日以降の治療費は原則として認められません。
ただし、①いわゆる植物状態(遷延性意識障害)などで生命を維持するうえで症状固定後の治療の必要性・蓋然性が認められる場合、②治療によって症状の悪化を防止する必要性が認められる場合、③症状固定後も強い身体的苦痛が残り、苦痛を軽減するための治療の必要性が認められる場合などについては、症状固定後の治療費や将来の治療費が認められるものとされています。
ちなみに、症状固定後の治療費とは症状固定後に出費した治療費のことです。
将来の治療費とは平均余命までの間に出費するであろう将来の治療費のことで、症状固定後の治療費と異なり、まだ出費のないものをいいます。
なお、労災申請のアフターケア制度によっても、症状固定後の治療費が支払われることがあります。

アフターケア制度の詳細はこちらをご覧下さい。

労災事故被害で請求できる損害 15

付添看護費用(入院付添費・通院付添費・自宅付添費)

付添看護費用(入院付添費・通院付添費・自宅付添費)

(1) 入院付添費

被害者が入院している間の、家族の付添い費用が認められることがあります。
入院付添費は、日額6500円というのが裁判の一般的な基準とされていますが(東京地方裁判所平成25年3月7日判例タイムズ1394号50頁など)、症状の程度によっては1割~3割の範囲で増額が考慮されることがあります(7150円~8450円)。
また、仕事を休んで入院に付き添ったという場合で、欠勤分の給料減少額(もしくは有給休暇を取得した場合の給料日額)が上記入院日額を上回る場合は、この休業損害相当額を入院付添費として請求していくことになります。

(2) 通院付添費

足を骨折して歩行できない、高次脳機能障害のため1人で通院できないといった場合、家族の通院付添い費が認められることがあります。
通院付添費は、日額3300円というのが裁判の一般的な基準とされていますが、事情に応じて増額されることがあります。
また、仕事を休んで通院に付き添ったという場合で、欠勤分の給料減少額(もしくは有給休暇を取得した場合の給料日額)が上記通院日額を上回る場合は、この休業損害相当額を通院付添費として請求していくことになります。

(3) 自宅付添費

退院後に自宅療養している間、ご家族が自宅で付添い看護をしているという場合、自宅付添費が認められることがあります。
裁判基準日額というものは決まっていませんが、入院付添費の日額6500円というのが目安になります。
ただし、入院時よりも症状が改善していることが多いと思われますので、事情によっては日額6500円よりも低額の認定となることがあります。
他方で、入院中は看護師による完全看護体制が取られているのに対し、自宅看護中はご家族が主に看護をしなければならなくなりますから、入院付添費よりも高額の日額算定がなされることもあります。

労災事故被害で請求できる損害 16

将来介護費

将来介護費

重度の後遺症を残してしまい、今後もずっと介護が必要であるという方については、将来介護費が認められることになっています。
職業付添人に介護を頼んでいる場合や、介護施設に入所している場合については、その実費相当額が認められます。
ご家族の方が介護をしているという場合は、日額8000円が裁判基準とされています。
ただし、これらについては、具体的看護状況によって増減することがあるとされています。
また、子どもが労災事故に遭い重度の後遺症を残してしまい、親がその介護をしているという場合は、親が67歳になるまでは近親者介護として計算し、親が67歳となった以降は職業付添人介護として将来介護費を算定することが多いです。
なお、将来の費用となりますので、逸失利益と同様、中間利息の控除が行われます。

中間利息の控除については、こちらをご覧ください。

また、現在は介護保険給付によって1割分の介護費しか負担していない場合であっても、将来介護費の算定に当たっては10割の請求ができることになっています。
例えば、現在の年間の介護費負担が50万円という場合は、将来介護費の算定にあたっては、年間介護費負担は500万円ということになります。
そして、この年額が平均余命の期間認められることになっています。
平均余命の計算は、厚生労働省が毎年出している簡易生命表によって行いますが、例えば、平成30年の50歳女性の場合、平均余命は38年とされています。
年間介護費500万円・平均余命38年の場合の将来介護費は、500万円×38年に対応するライプニッツ係数16.8679=8433万9500円となります。
なお、令和2年4月1日以降の労災事故の場合の38年に対応するライプニッツ係数は22.4925とされますので、このライプニッツ係数で計算した場合は1億1246万2500円となります。

労災事故被害で請求できる損害 17

将来雑費(今後ずっと支出していくことになるおむつ代など)

将来雑費

重度の後遺症を残してしまい、おむつ代などの雑費の出費を余儀なくされているという場合、平均余命までの将来雑費が損害として認められることがあります。 将来雑費の種類としては下記のようなものが挙げられます。

  1. ①排泄関係

    おむつ、尿取りパッド、清掃用尻拭き、カテーテル、ゴム手袋、人工肛門のケア用品など

  2. ②食事関係

    食事中のエプロン、飲食物にとろみをつけるもの、ミキサーなど

  3. ③口腔関係

    歯磨き用の吸い込み、口腔洗浄時の汚水受け、たん吸引機など

  4. ④その他

    気管切開チューブ、胃ろう、注入栄養液、皮膚保護剤、ティッシュ、ガーゼなど

例えば、平成30年の50歳女性につき、月10万円の介護雑費の支出があるケースにおける将来雑費は、月10万円×12か月×平均余命38年に対応するライプニッツ係数16.8679=2024万1480円となります。

なお、令和2年4月1日以降の労災事故の場合の38年に対応するライプニッツ係数は22.4925とされますので、このライプニッツ係数で計算した場合は2699万1000円となります。
おむつ代など細々とした雑費の支出も、今後一生続くとなると多大な出費となりますので、領収書やレシートなどを保管しておくようにしてください。
.8679=2024万1480円となります。

労災事故被害で請求できる損害 18

装具・器具等購入費

将来雑費

車いす・介護用ベッドなどの装具・器具の購入費は、必要性があれば認められることになっていて、また、同じものを一生使い続けるわけにはいきませんから、耐用年数に応じた将来の買い替え費用も請求できることになっています。
損害として認められる装具・器具としては、下記のようなものが挙げられます。

  1. ① 目の関係

    義眼、メガネ、コンタクトレンズ

  2. ② 耳の関係

    補聴器

  3. ③ 歯や口腔関係

    義歯、歯・口腔清掃用具、吸引機、障害者用はし、うがいキャッチなど

  4. ④ 手の関係

    義手、上肢装具など

  5. ⑤ 足や移動の関係

    義足、車いす(手動・電動・入浴用)、盲導犬費用、折り畳み式スロープ、歩行訓練器、下肢、装具、短縮障害対応の特注靴、杖、自動車リフトなど

  6. ⑥ ベッド関係

    電動ベッド、介護支援別途、エアマット、体位変換補助用具、特殊寝台専用手すり、ベッドサイドテーブルなど

  7. ⑦ 入浴関係

    入浴についての天井走行リフトや走行用レール、入浴用担架、洗髪器など

  8. ⑧ その他

    人工呼吸器、コルセット、サポーター、介護テーブル、座位保持装置、起立保持具、補助いす、せき髄刺激装置、カツラ、エレベーター、手すり、パソコン、障害者用マウス、会話補助具など

労災事故被害で請求できる損害 19

家屋改造費・自動車改造費・転居費用等

家屋改造費・自動車改造費・転居費用等

被害者の後遺症の内容や程度からして、必要性が認められる場合には、家屋改造費・自動車改造費・転居費用・家賃差額・自動車購入費などの相当額が認められることになっています。
ただし、バリアフリー化などは他の家族の便益となることもありますので、全額が損害として認められずに、支出した費用の一部のみが損害として認められることも多いです。
立証の良し悪しによって、認定額が変わってくる損害費目です。
労災事故前の家や自動車の状況と、被害者の後遺症の内容程度を照らし合わせて、このままでは家で生活できないことや、病院への通院に支障が出ることを立証していく必要があります。
また、医学的見地からの意見も重要ですので、医師にも、従来の家の状況や車の状況を写真などで確認してもらい、医学的に、どのような家屋改造や自動車改造などが必要であるのかについて医学的な意見をもらうことも行っていきます。

労災事故被害で請求できる損害 20

後見等関係費用

死亡事故の場合の損害

労災被害により重度の後遺症を残してしまい、家庭裁判所による後見人の選任が必要となってしまったというケースでは、成年後見開始の審判手続費用や、後見人報酬などが損害として認められることがあります。

労災事故被害で請求できる損害 21

よくある質問

よくある質問

Q 症状固定の後の治療費は支払ってもらえないのですか?

症状固定とされた場合、これ以上治療しても症状は改善せず、後遺症として残ってしまうとの判断がされたということですから、症状固定日以降の治療費は原則として認められません。
ただし、aいわゆる植物状態(遷延性意識障害)などで生命を維持するうえで症状固定後の治療の必要性・蓋然性が認められる場合、b治療によって症状の悪化を防止する必要性が認められる場合、c症状固定後も強い身体的苦痛が残り、苦痛を軽減するための治療の必要性が認められる場合などについては、症状固定後の治療費が認められるものとされています。
また、①せき髄損傷、②頭頸部外傷症候群等(頭頸部外傷症候群・頸肩腕障害・腰痛)、③尿路結石、④慢性肝炎、⑤白内障等の眼疾患、⑥振動障害、⑦大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折、⑧人工関節・人工骨頭置換、⑨慢性化膿性骨髄炎、⑩虚血性心疾患等、⑪尿路系腫瘍、⑫脳の器質性障害、⑬外傷による末梢神経損傷、⑭熱傷、⑮サリン中毒、⑯精神障害、⑰循環器障害、⑱呼吸機能障害、⑲消火器障害、⑳炭鉱災害による一酸化炭素中毒といった診断名の場合は、労災のアフターケア制度を利用することによって症状固定後の治療費を支払ってもらえることがあります。

Q 労災被害に遭ってしまいましたが、慰謝料はもらえますか?

労災申請では慰謝料を請求することはできません。
ただし、会社に安全配慮義務違反があった場合や加害者がいる場合には、会社や加害者に対して慰謝料請求をしていくことができます。
慰謝料の金額は、お怪我の内容、入通院期間、後遺症が残ってしまったかどうかなどによって変わってきます。
無料で賠償額の査定をさせていただいておりますので、ご自身の慰謝料額が気になる方は、お気軽にお問い合わせください。

賠償額の無料査定の詳細はこちら >>

Q 家族が労災被害に遭い、私も精神的なショックを受けています。被害者家族の精神的な苦痛は賠償の対象にならないのでしょうか?

被害者の方は重度の後遺症を残してしまったようなケースでは、裁判例上、近親者慰謝料が認められる傾向にあります。
ご家族が入通院に付添いっているといった場合は、入通院付添費の損害賠償請求をしてくことができます。

Q 労災事故でケガをしてしまい、身体が痛いので、タクシーで通院したいのですが、いいでしょうか?

足の骨折や靭帯損傷などタクシー以外での通院が困難な場合などにはタクシーでの通院代が認められますが、原則は、バスや電車での通院をおすすめしています。
タクシー代を否定され、自腹となってしまう可能性があります。

この記事の執筆者

小杉 晴洋
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災などの損害賠償請求解決件数1000件超。

経歴
小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身・福岡市在住。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(当時。現「神奈川県弁護士会」)に登録後(損害賠償研究会所属)、福岡県弁護士会に登録換え(交通事故委員会所属)。