業務災害 死亡 遺族(補償)給付
労災の死亡事故の慰謝料金額は?1億円超の解決事例を基に専門弁護士解説
死亡事故被害者Cさん 30代・男性・現場作業員(福岡県)
本ページでは、労災被害者専門弁護士が、
労災死亡事故における慰謝料・逸失利益などの賠償金額相場について、
合計約1億2000万円の損害賠償金額を獲得した解決事例をもとに解説していきます。
労災死亡事故の無料法律相談に至るまで
Cさん(30代前半・男性)は、業務中の事故によって、お亡くなりになられてしまいました。
Cさんのご遺族は、家から1番近い法律事務所に相談に行き、損害賠償請求について依頼をしましたが、
- 加害者サイドの刑事処分についてはノータッチ(被害者参加制度の経験がない)
- 労災の申請についてもノータッチ(労災申請の経験がない)
ということで、「この弁護士に依頼を続けていいのだろうか」という不安を抱きます。
スマートフォンで死亡事故の労災に強い弁護士を検索してみたところ、労災被害者の方のご相談を専門とする弁護士法人小杉法律事務所の存在を見つけました。
家からやや遠かったですが、無料相談を実施してくれるということだったので、直接話を聞いてみることにしました。
お伺いいただいた弁護士小杉晴洋は、
労災における死亡事故では、以下の3つの軸の検討が主に必要となりますとお伝えしました。
- 加害者サイドへの損害賠償請求
- 加害者サイドの刑事処分
- 労働基準監督署への遺族補償給付の申請
一つずつ順番にみていきましょう。
労災専門弁護士の無料相談① 慰謝料金額
故人の仕事状況や生活状況を丁寧に聴き取り、労災死亡事故における損害賠償金額がいくらくらいになるかという見積りを説明しました。
一般に弁護士(裁判)基準と呼ばれる損害賠償金額の相場は、
『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準 上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター編)を基準としています。
交通事故の場合における基準ですが、損害賠償請求という点では同じなので労災の死亡事故においても同じ基準が用いられています。
葬儀関係費用
葬儀関係費用はまさに「葬儀に関係して支出した費用」になります。
原則として150万円を上限とされており、150万円を下回る場合には実際に支出した金額とされています。
ただし、被害者の生前の様子(多くの人に愛されていて150万円以上の葬儀費がかかることも妥当である)を考慮するような場合や、
死亡場所が居住地と離れており、葬儀を2回以上行う必要があるような場合、
仏壇・仏具購入費・墓碑建立費を別途認めるような場合、遺体搬送料・遺体処置費等を別途認めるような場合など、
150万円の上限を超える裁判例も多く見られます。
なお、労災の死亡事故の場合は所轄の労働基準監督署長に対して、
- 葬祭料又は複数事業労働者葬祭給付請求書(様式第16号)または葬祭給付請求書(様式第16号の10)
- 死亡診断書、死体検案書、検視調書またはそれらの記載事項証明書などの、「被災労働者の死亡の事実及び死亡の年月日」を証明することができる書類
を提出することにより、葬祭給付として、
31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額か給付基礎日額の60日分のどちらか高い方の金額が支払われます。
逸失利益
逸失利益とは、被害者の方が事故に遭ったことにより、将来にわたって得られるはずであったのに得られなかった利益のことです。
被害者の方は今回の労災事故に遭わずに人生を全うしていれば、将来もお仕事をして収入を得られていたはずです。
しかし事故に遭い、亡くなってしまうと、その収入は得られなくなってしまいます。その収入についても損害賠償請求が可能です。
逸失利益の基本的な計算方法は、
逸失利益=基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
という式で表されます。
生活費控除率とは、被害者の方が事故に遭い亡くなってしまうと、
収入が得られなくなるのは先ほどまでのご説明のとおりですが、生活に必要な支出もかからなくなります。
「被害者本人が生きていたら…」というifのストーリーをもとに話を進める逸失利益においては、
支出分も考慮に入れる必要があります。
その考慮が生活費控除率というわけです。
就労可能年数とは、原則として被害者が亡くなった年齢から67歳までの年数を言います。
被害者の方が生きていたらこのくらいの年齢まで働けていたという想定です。
被害者の方の死亡時の平均余命の2分の1が、67歳までの年数より長いときは、平均余命の2分の1が就労可能年数として採用されます。
例として年収500万円、40歳の男性で、扶養に奥様とお子様1名が入っている方が亡くなった場合には、
逸失利益は500万円×(1-30%)×(67-40)年に対応するライプニッツ係数(18.3270)=6414万4500円となります。
逸失利益の計算は数式に当てはめるだけで大体の計算はできますが、
被害者の方の生前の生活の様子に応じて若干の増減があります。詳しくお知りになりたい方はお気軽にお問い合わせください。
なお、所轄の労働基準監督署長に、
- 遺族補償年金・複数事業労働者遺族年金支給請求書(様式第12号)または遺族年金支給請求書(様式第16号の8)
- 死亡診断書、死体検案書、検視調書またはそれらの記載事項証明書など、被災労働者の死亡の事実及び死亡の年月日を証明することができる書類
- 戸籍の謄本、抄本など、請求人及び他の受給資格者と被災労働者との身分関係を証明することができる書類
- 請求人及び他の受給資格者が被災労働者の収入によって生計を維持していたことを証明することができる書類
などの書類を提出することで、遺族(補償)年金・遺族特別年金・遺族特別支給金を受け取ることができます。
受け取ることができる方は、
被災労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹となります。
ただし、妻以外の遺族については、被災労働者の死亡の当時に一定の高齢又は年少であるか、あるいは一定の障害の状態にあることが必要です。
ここでいう「その収入によって生計を維持していた」は、生計の一部を維持していればよく、いわゆる「共働き」もこれに含まれます。
受給権者となる順位は以下のとおりです。
- 妻または60歳以上か一定障害の夫
- 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の子
- 60歳以上か一定障害の父母
- 18歳に達する以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の孫
- 60歳以上か一定障害の祖父母
- 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか60歳以上または一定障害の兄弟姉妹
- 55歳以上60歳未満の夫
- 55歳以上60歳未満の父母
- 55歳以上60歳未満の祖父簿
- 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹
支給額は、
遺族数 | 遺族(補償)年金 | 遺族特別年金 | 遺族特別支給金 |
---|---|---|---|
1人 | 給付基礎日額の153日分 ※55歳以上の妻又は障害状態にある妻の場合は175日分 |
給付基礎日額の153日分 ※55歳以上の妻又は障害状態にある妻の場合は175日分 |
300万円 |
2人 | 給付基礎日額の201日分 | 給付基礎日額の201日分 | 300万円 |
3人 | 給付基礎日額の223日分 | 給付基礎日額の223日分 | 300万円 |
4人以上 | 給付基礎日額の245日分 | 給付基礎日額の245日分 | 300万円 |
となっています(給付基礎日額についてはこちらのページをご覧ください。)。
死亡した被災労働者の遺族の中に、遺族(補償)年金を受け取る権利のある遺族がいない場合には、その他の遺族に対して遺族(補償)一時金及び遺族特別一時金が支給されます。
受給権者となる順位は以下のとおりです。
- 配偶者
- 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
- その他の子・父母・孫・祖父母
- 兄弟姉妹
となっています。
支給額は、
遺族(補償)一時金 | 遺族特別一時金 | 遺族特別支給金 |
---|---|---|
給付基礎日額の1000日分 | 給付基礎日額の1000日分 | 300万円 |
となっています。
このように、逸失利益は相続人の方は当然に請求できますが、労災からの遺族(補償)給付は支給権者=相続人ではないので注意が必要です。
慰謝料
被害者の方が亡くなった場合の慰謝料は、被害者本人の慰謝料と、近親者の方固有の慰謝料(近親者慰謝料)とを合わせて計算されます。
死亡慰謝料の基準(目安)は、
死亡した方が一家の支柱の場合 | 2800万円 |
死亡した方が母親、配偶者の場合 | 2500万円 |
死亡した方が独身の男女、子供、幼児等の場合 | 2000万円~2500万円 |
となっています。
ただしこれはあくまで目安とされている基準です。何度も述べていますが、被害者の方の生前の生活などにより大きく増減します。
現在依頼している弁護士さんは損害賠償金額がいくらくらいになるかという具体的説明は一切していないということで、Cさんのご遺族は驚かれていました。
ただし、法律相談時における見積りは、確定的なものではなく、あくまで暫定的な見立てに基づくものです。
受任後の証拠収集の良し悪しによって、損害賠償金額は上下しますので、ご依頼を受けた後の専門的な動きが重要となります。
なお、後述する刑事処分への参加も、損害賠償金額を押し上げる証拠となりますので、刑事だけでなく民事の損害賠償請求上も重要です。
具体的には、ここまで述べてきた死亡慰謝料金額・近親者慰謝料金額・逸失利益の金額(基礎収入額立証や生活費控除率立証)に影響を与えます。
労災専門弁護士の無料相談② 刑事処分
労災の死亡事故の場合は加害者(会社や従業員など)についての捜査があります。
死亡事故の場合は、警察も割と丁寧に捜査をしてくれますが、労災事故の場合は「不起訴処分」となることが多いです。
弁護士小杉よりご遺族(奥様)に対し、捜査状況をお尋ねしたところ、「よくわからない」とのことでした。
現在依頼をしている弁護士さんに至っては、捜査担当の警察官と話すらしていないということでした。
遺族側として刑事処分に参加するには、捜査担当の警察官・検察官や、公判担当の検察官との連携が極めて大事となりますが、そのあたりがおざなりになっているという印象を受けました。
刑事処分への被害者参加については、比較的新しい制度ということもあり、経験値が少ない弁護士が多いです。
労災専門弁護士の無料相談③ 遺族補償給付
労災死亡事故における遺族補償給付では、いつ申請を行うかという「時期」が重要となります。
先に申請をして受け取ってしまうと、加害者サイドへの損害賠償請求の際に、遺族補償給付として受け取った金額が損害賠償金から引かれてしまいます。
言い換えれば、「支給調整」という概念があるため、労災申請の時期によって、ご遺族の手取り金額の合計値が変わります。
また、労災の申請は、弁護士では代理で行うことができず、社会保険労務士(社労士)のみ代理申請が可能となっています。
ただし、社労士の先生は、損害賠償請求のプロではありませんので(損害賠償請求の代理はできません。)、上記のような損害賠償請求との支給調整の関係などを処理することが困難です。
弁護士法人小杉法律事務所では、弁護士資格のみならず社労士資格を有する木村治枝が、労災被害を専門的に取り扱っておりますので、
刑事処分への被害者参加や加害者サイドへの損害賠償請求のみならず、労災の申請も合わせて取り扱っております。
委任契約の締結(相談料・着手金無料)
以上3軸を中心とした法律相談を行った結果、現在依頼している弁護士を解任して、弁護士法人小杉法律事務所に依頼を変えるということになりました。
人の仕事を取るような真似はしたくないので、現在依頼している弁護士さんの解任を勧めることはないのですが、死亡事故の場合、ご遺族の一生の後悔となってしまう懸念もあるため、Cさんご遺族の希望に従い、担当をさせていただくことにしました。
なお、労災事故のご依頼の場合は、原則、相談料無料で着手金も無料ですので、Cさんのご遺族からお金を直接頂くということはありません。
弁護士報酬についても、獲得した賠償金額から清算を行います。
刑事裁判において有罪判決を獲得
受任後の最初の動きは、刑事処分への遺族関与を中心に行いました。
具体的には、捜査担当の警察官とのやりとり、捜査担当の検察官とのやりとり、遺族調書を取る前にご遺族との丁寧な打合せを行い、結果として起訴処分がされることになりました。
起訴がなされた後は、公判担当検察官と何度も打合せを重ね、刑事裁判が始まってからは、証人尋問・被告人質問・心情意見陳述・論告意見陳述の場で弁護士小杉が参加させてもらいました。
被告人の側は一部起訴状記載内容を否認していましたが、証人尋問・被告人質問・心情意見陳述・論告意見陳述の各場面において、
被告人の弁解がいかに不合理であるかをあぶりだすように意識して訴訟活動に努めました。
また、民事の損害賠償金額に影響を与える事項についても、なるべく刑事裁判の判決に盛り込まれるよう意識をしました。
その結果、無事に起訴状公訴事実記載のとおりの事実が認定されて有罪判決が出されました。
また、被害者の方のお兄様(本来近親者慰謝料の請求人に当たらない)についても、近親者に準ずる立場にあると主張できるような証拠を得たり、
民事の損害賠償請求に使える要素も判決書に盛り込んでもらうこともできました。
民事裁判で損害賠償金額1億円以上を獲得
刑事裁判の証拠を元にしながら、民事の損害賠償請求訴訟を提起しました。
なお、先に述べたとおり、戦略的に労災の遺族補償給付の申請は後回しにしています。
死亡逸失利益で基準最高レベルで認定
死亡逸失利益というのは、労災事故前年の年収によって決まるのが原則とされていますが、
Cさんの年収は300万円未満ということで、死亡逸失利益で多額の損害賠償金額を得ることは困難な状況にありました。
しかし「現実収入が賃金センサスの平均額以下の場合、平均賃金が得られる蓋然性があれば、それを認める」という基準もあります。
これをもとに、労災事故が発生していなければ、Cさんが今後どのような仕事のキャリアを積んでいっていたのかという点について、
刑事裁判上でも丁寧に訴えていたため、それを民事の裁判官も汲んでくれて、労災事故前の年収の2倍以上の基礎収入額を認定してくれ、
それを基にした逸失利益の計算による額を認定してくれました。
なお、生活費控除率も最高レベルの水準で認定されています。
慰謝料金額
先ほど述べたように、被害者の方が一家の支柱の場合の死亡事故の慰謝料水準というのは、2800万円が最高水準金額とされています。
しかしながら、裁判例の中には、この最高水準を超える慰謝料金額を認定している例もありますので、当該裁判例を意識しながら立証を行いました。
刑事裁判においても、この民事の慰謝料に関する裁判例を意識しながら訴訟活動を行っていました。
その甲斐あって、相続人以外の近親者も含めた合計7名の近親者慰謝料請求が認め、慰謝料総額として3000万円の金額が認められました。
損害賠償金額1億2000万円での和解解決
そのほか、葬儀費用を上限基準の150万円を超えて認定させた、過失割合を0:100にさせた、遺族が労災事故後に仕事を休んだ分の休業損害も認定させた、
などの損害費目を積み重ね、合計約1億2000万円での和解解決となりました。
なお、本解決事例は令和2年4月1日の改正民法施行前の労災事故ですので、現在において同じ労災事故が起きていたとすれば、更に数千万円の増額が見込まれます。
労働基準監督署への遺族補償年金の申請
支給調整を意識して、刑事及び民事の裁判が解決して、しばらくした後に労働基準監督署への遺族補償年金の申請を行いました。
遺族補償年金の支給要件等についてはこちらのページで詳しく解説しています。
労災事故被害者ご遺族の言葉
「家の近くの弁護士さんではなく、詳しい専門の弁護士さんに依頼してよかったなと感じました。担当してくれた小杉弁護士は、刑事裁判の時も、民事裁判の時も、かなりお詳しい感じで、任せきることができましたし、詳しいだけでなく、家まで来てくれてお線香をあげてくれたり、一緒に寄り添って戦ってくれたなという印象です。」
労災死亡事故の損害賠償金額は専門の弁護士によって変わります
労災死亡事故では、「①刑事処分・②民事の損害賠償請求・③労災への申請」の3軸を意識しなければならず、しかも、①の出来が②の金額を上げることになりますし、③の時期によって②の金額を下げることになるなど、それぞれの要素が複雑に絡んでいます。
ご家族が、仕事中や通勤中に死亡事故に巻き込まれてしまったという方は、専門の弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士法人小杉法律事務所では、弁護士兼社会保険労務士の木村治枝を中心として、労災死亡事故を専門的に取り扱っております。
労災事故の場合は、無料相談を実施しており、着手金も無料となっていますので、遠慮なくお問い合わせください。