8級 業務災害 足 障害(補償)給付
業務中の事故に伴う左足末梢神経損傷について障害診断書の訂正を行い後遺障害等級準用8級の認定を獲得し、賃金センサスを用いた逸失利益の主張をすることにより、示談に限り過失相殺なしで約6000万円の解決をした事例
労働災害被害者Bさん 10代・男性・会社員(福岡県)
今回ご紹介するのはBさん(10代・男性・会社員 福岡県在住)の解決事例です。
Bさんは工事現場での業務中に左足を重機に踏まれ、末梢神経を損傷する怪我を負いました。
Bさんのお母様からご依頼を受けた労災被害者専門弁護士の木村治枝は、障害診断書の訂正を行うことで後遺障害等級準用8級の認定を獲得し、
示談交渉においても賃金センサスを用いた逸失利益の主張などをすることにより、約6000万円での示談解決をしました。
- 労災に遭った際に気を付けるべきポイントは?
- 労災被害者専門弁護士に依頼するメリットとは?
Bさんの解決事例をもとに解説します。
弁護士法人小杉法律事務所では、労災被害者専門弁護士による無料相談を実施しております。
労働災害(労災)被害にお困りの方は、ぜひ一度お問い合わせください。
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弁護士に相談される前の状況
労災事故の態様
Bさんは一次請けの会社の従業員で、元請けの会社の工事現場での補助業務を担当していました。
歩いて重機の後ろを通ろうとしていたところ、元請け会社の重機の運転手が突然後退をはじめ重機のクローラー部分に左足を挟まれてしまいました。
Bさんは大声を上げて運転手に知らせようとしましたがなかなか気づいてもらえず、10秒ほど左足を踏まれ続けていました。
地面が柔らかかったこともあり骨折はしませんでしたが、物凄い激痛でした。
しかし、重機の運転手は今回の労災事故について足を挫いたと虚偽の報告をしろと言い、救急車も呼ばないままその場限りで事故処理を終わらせようとしていました。
結局Bさんが勤めている会社の上司が救急車を呼ぶよう指示し、Bさんは病院に行くことができましたが、
救急隊員や病院に対しては足を挫いたという説明をしてしまいました。
治療状況
当初元請けの会社は労災による治療対応等を認めていませんでしたが、一次請けの会社との話し合いなどを踏まえ、労働基準監督署への申請を行いました。
無事労働基準監督署から今回のBさんのお怪我が労災事故によるものであると認められ、
今回の労災事故に関する治療費などは労災の療養補償給付により対応できるようになりました。
労災保険給付について規定している労働者災害補償保険法は、その第一章第一条で「労働者災害補償保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(以下「複数事業労働者」という。)の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。」と規定しています。
その目的の中に「労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため」と定められているので、
特に業務上災害についての療養補償給付の認定は迅速に行われることが多いです
(一方でいわゆる通勤災害についての療養給付の認定は、被害者の怪我が本当に通勤中に発生したものかどうかなどの審査に時間を要するため、業務上災害よりも認定が遅くなるケースが多いです。)。
Bさんは最初に救急搬送された病院でレントゲンを撮影しましたが、骨折が見られないということでその日はギプス固定をして自宅に帰ることになりました。
しかし痛みや腫れが強く、引く気配もなかなか見られないため別の病院を受診し、MRIの撮影などを経て「左足関節部圧挫傷、左足部圧挫傷、左下腿圧挫傷」等の診断を受けました。
Bさんはそこから1か月ほど入院をし、何とか松葉杖を使えば立つことができるようになり、リハビリを開始しました。
Bさんは事故当時未成年でしたので、主にお母様が今回の労災事故の処理を担当していました。
お母様は弁護士に依頼するタイミングをいつにしたらよいかを迷っており、
ひとまず無料での相談を受けようと考え、弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせいただきました。
労災被害者専門弁護士木村治枝による無料法律相談
労災事故に遭ったときに、弁護士に依頼するタイミングはいつが良い?
Bさんのお母様から弁護士を入れるタイミングについてご質問を受けた弁護士木村治枝は、「今回のBさんのケースでは、弁護士に依頼するなら早いほうが良い」という回答をしました。
弁護士に依頼するタイミングの基準で最も大事なのは、結局のところ弁護士に依頼することで得になるか、損になるリスクはないかという点です。
事故直後から弁護士に依頼することで、面倒な事故処理や労災給付申請書類の作成などを一任し、そういったストレスからの解放をされるというところは大きなメリットです。
また治療方針などについて悩んだ時にも、労災の障害補償給付の支給を受ける可能性を高めるという観点や、損害賠償請求でより有利になる可能性を高めるという観点からのアドバイスを受けることもできます。
一方で、時間制報酬を採用している弁護士の場合は当然早く依頼すればするだけ費用はかさみますし、
そうではない報酬体系を採用している弁護士の場合であっても、
治療開始時点では後遺障害が残りそうだったので依頼したが、治療を続けていく中で完治してしまったというような場合には、
弁護士に依頼した場合とご自身で事故処理を進めていた場合とで、(弁護士費用を差し引きした結果)最終的に受け取ることができる金額があまり変わらないということもあり得ます。
この場合はある程度ご自身で治療を進めていって、なかなか状態が改善せず、後遺障害が残りそうだと思ったタイミングで弁護士に依頼した方が良いということになりますね。
治療が終了し、後遺障害等級の判断が下された後の方が、当然ですが損害額の算定はしやすく、弁護士も見立てが立てやすくなります。
弁護士事務所の中で治療が終了してからまた相談に来てくださいという回答が多いのはこれが理由です。
もちろんそれは被害者の方に損をさせるリスクを取らないようにするという点で被害者の方のためになる回答ではあります。
ただ、適切な賠償金を受け取るためには適切な後遺障害等級の認定が必要で、そのためには治療期間中から弁護士によるアドバイスがあった方が良いのは当たり前です。
そして、弁護士法人小杉法律事務所はこの治療期間中からのサポートによる適切な後遺障害等級認定に自信を持っています。
Bさんのお怪我はかなり大きく、労災の障害補償給付支給申請をしても何ら後遺障害の残存が認められないとは考えにくいものでした。
また、末梢神経損傷に関する後遺障害等級の認定は後述する気を付けるべきポイントがあり、治療期間中からそこに気を付けることで、
弁護士に依頼していただいた方がBさんにお得になると考えられました。
以上のような判断のもと、弁護士木村治枝は今回のBさんの労災事故の場合は、弁護士に依頼するなら早いほうが良いという回答を差し上げました。
弁護士にどのタイミングで依頼するかどうか(そもそも依頼すべきかどうか)は、被害者の方お一人お一人が労災事故で負われたお怪我の内容や、
会社に対する損害賠償請求の可能性、各弁護士事務所の費用体系など多くの考慮要素があります。
これは弁護士に実際に話を聞いてみることをお勧めします。
弁護士法人小杉法律事務所では労災被害者専門弁護士による、ご相談者様お一人お一人のご事情に合わせた無料のご相談を実施しておりますので、
是非お気軽にお問い合わせください。
労災被害者専門弁護士に依頼するメリット
適切な後遺障害等級認定を得られるよう尽力(障害診断書の訂正)
先ほど述べたように、労災被害者を専門とする弁護士法人小杉法律事務所は適切な後遺障害等級認定に自信を持っています。
これが、労災被害者専門弁護士に依頼する大きなメリットと言っても良いでしょう。
労災事故により被害者の方に後遺症が残ってしまったような場合、
損害額を計算するうえで大きなウェイトを占めるのは、後遺症慰謝料と逸失利益です。
後遺症慰謝料
まず後遺症慰謝料についてみると、多くの場合で障害補償給付支給決定時に労働基準監督署が認定した障害等級に基づいて画一的に金額が認定されることが多いです。
労災・交通事故など民事の損害賠償請求において実務上の基準を示している『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)では、以下の表のように基準が定められています。
後遺障害等級 | 慰謝料の金額基準 |
第1級 | 2800万円 |
第2級 | 2370万円 |
第3級 | 1990万円 |
第4級 | 1670万円 |
第5級 | 1400万円 |
第6級 | 1180万円 |
第7級 | 1000万円 |
第8級 | 830万円 |
第9級 | 690万円 |
第10級 | 550万円 |
第11級 | 420万円 |
第12級 | 290万円 |
第13級 | 180万円 |
第14級 | 110万円 |
この表を見ると一目瞭然ですが、後遺障害等級によって金額に大きな差が生まれます。
適切な後遺障害等級の認定を受けなければ慰謝料だけ見ても大きな損をすることになってしまうのです。
逸失利益
次に逸失利益についてみましょう。
『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』では、逸失利益の計算式は次のようにされています。
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数) |
この計算式の中の労働能力喪失率が、後遺障害等級と対応しており、
労働基準局長通牒 昭 32.7.2 基発第 551 号による労働能力喪失率表に基づき、認定された障害等級に応じて労働能力喪失率が決定される運用が原則です。
適切な後遺障害等級認定を受けることの重要性がご理解いただけたと思います。
では、この適切な後遺障害等級認定はどうやって受ける可能性が高まるかというと、
適切な障害診断書を作成することが最も重要になります。
労働基準監督署に対し障害補償給付の支給請求を行う場合には、労災所定の障害補償給付(複数事業労働者障害給付)支給請求書(様式第10号)とともに、
症状固定時の医師の診断書である障害診断書の提出が必要となります。
今回のBさんの件でももちろん障害診断書の作成及び提出を行いました。
Bさんは今回の労災事故の後、懸命にリハビリを行いましたが、松葉杖をつき、足を引きずりながら歩くくらいまでしか回復しませんでした。
左足首や足指は全く動かすことができず、左足裏は全体的に感覚が全くありませんでした。
治療を続けてもこれ以上良くならない状態(症状固定)を迎え、障害診断書の作成を行うことになります。
今回Bさんの怪我(左足関節部圧挫傷、左足部圧挫傷、左下腿圧挫傷)後の後遺症について認定される可能性がある障害等級は以下のとおりです。
①左足首の可動域制限について
第8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
第10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
第12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
足首の可動域制限についての詳しい解説はこちらのページからご覧ください。
②左足指の可動域制限について
第9級15号 | 1足の足指の全部の用を廃したもの |
第11級9号 | 1足の第1の足指を含み2異常の足指の用を廃したもの |
第12級12号 | 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの |
第13級10号 | 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの |
第14級8号 | 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの |
足指の可動域制限についての詳しい解説はこちらのページからご覧ください。
③左足裏の感覚がないことについて
第14級9号 | 疼痛以外の感覚の感覚障害が発現した場合は、その範囲が広いものに限り、第14級9号に認定することになる |
感覚障害についての詳しい解説はこちらのページからご覧ください。
①左足首の可動域制限と、②左足首の可動域制限については、関節可動域角度の数値によって決まります。
Bさんのように片方の足を怪我しているような方の場合は、患側(左足)の関節可動域角度が、健側(右足)の関節可動域角度のどれくらいに制限されているかによって判断されます。
したがって障害診断書の作成に当たっては、各関節の可動域角度の測定が必須となりますから、
弁護士木村治枝は主治医に対して障害診断書作成の際のポイントについてのお手紙を送付しました。
ご作成いただいた障害診断書には、後遺障害等級認定の基準には足りない(このままでは障害等級の認定が得られない)数値が書いてありました。
それは、主治医がBさんの関節可動域角度を他動値で測定していたためです。
他動値とは、文字どおり主治医などの被害者ではない他の人が関節を稼働させた場合の可動域角度をいいます。
原則として、労災の障害補償給付における後遺障害等級認定における判断はこの他動値を用いて行います(詐病などを防ぐためです)。
Bさんは骨折をしたり、関節部を損傷したわけではありませんから、他動値による可動域角度に制限はありませんでした。
しかし、実際のところ、Bさんは神経を損傷していますから、自分で左足首や左足指を動かすことはできません。
障害補償給付の支給における後遺障害は、労働能力の喪失を前提としています。
仮に他の人に動かしてもらうことで関節が動いたとしても、実際の労働に支障がない訳がありません。
Bさんは現に足を引きずり、松葉杖を使わないと歩けないほどの障害が残っています。
このような場合に他動値による測定結果を、後遺障害認定においてそのまま適用しては被害者にとってあまりに酷です。
したがって労災の等級認定基準においては、「末梢神経損傷を原因として弛緩性の麻痺となり、他動では可動するが、自動では可動することができない場合」には、
自動値(自分で動かした場合の関節可動域角度)による関節可動域角度を採用することと定められています。
弁護士木村治枝はこの基準をもとに、今回のBさんの場合は自動値による判断が妥当であり、障害診断書に自動値の追記が必要であると考え、
主治医に自動値を再測定したうえで、障害診断書に追記していただくよう依頼しました。
その結果、障害診断書に足首と足指の自動値を追記していただくことができ、
労働基準監督署の判断により、左足首について第10級11号「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」が、
左足指について第9級15号「 1足の足指の全部の用を廃したもの」がそれぞれ認定され、併合の方法を用いた準用8級の認定がされました!
労働基準監督署による後遺障害等級の認定の際は、調査員との面談がされることが多いため、
実際にBさんのお怪我の様子を見てもらうことができたのも大きかったと思われます。
この認定により給付基礎日額の503日分の障害補償給付の支給がありました。
これは会社から受領する損害賠償請求のうち、逸失利益と差し引きがあります。
示談交渉でも被害者の方に最も得になる解決を目指します
ここまで述べてきたように、適切な後遺障害等級認定を得ることはとても重要です。
ただし、多くの労災事故の場合、会社側の安全配慮義務違反に伴う損害賠償請求ができるのかという点も同じくらい重要なことです。
労働基準監督署から障害等級認定を得ることは、確かに業務中の労災事故で負傷し、
その怪我が原因で後遺症が残ったという点については一つの証拠となります。
しかし、労災認定の際に会社に安全配慮義務違反があったかどうかは問題になりません(専ら本人の過失であっても労災認定はされます)から、
労災から支払われた保険金以上に会社に損害賠償金の請求をできるかどうかはまた別問題です。
そしてこの会社に損害賠償請求をできるかどうかという点についてですが、
会社側は遅くとも請求を行った段階で弁護士を立ててくることが多いです。
相手がプロになりますから、弁護士に相談されることをお勧めします。
今回のBさんの場合は治療中から既にご依頼を受けておりましたから、そのまま元請けの会社の代理人弁護士との交渉を行うことになりました。
実務上は被害者側から、
- 会社側の安全配慮義務違反により今回の労災事故が発生したのだということ
- その労災事故によりどれだけの金銭的損害が発生したのかという具体的な額
を提示したうえで、話し合い(示談交渉)でまとまるようであればそこで解決となり、
どちらか一方又は双方が納得できない場合は裁判に移行するというケースが多いです。
1の点で弁護士に依頼することのが重要なのは先ほどまで見てきたとおりですが、
2の点でも、弁護士、とりわけ労災事故被害者専門弁護士に依頼することが重要です。
適切な損害額の計算
そもそも労災事故により発生した金銭的損害とはなんでしょうか。
イメージのしやすい治療費や通院交通費などの、労災事故に遭ったことで支出せざるを得なくなったような損害はもちろん、
労災事故に遭っていなければ労働できていた分の休業損害や、逸失利益といった損害もあるはずです。
また、怪我の苦痛や通院のストレスなどを金銭に換算した入通院慰謝料や後遺症慰謝料もあります。
こういった様々な費目のそれぞれに基準があります。
適切な損害額の計算は、単にその基準を知っているというだけではなく、
被害者の方お一人お一人に実際に現実として発生した損害を、お一人お一人に向き合って正確に把握し、
基準にあてはめて金銭に換算し損害額として請求しなければならないわけです。
これは被害者専門弁護士が最も得意とすることと言ってよいでしょう。
実際にBさんの事例でみていきましょう。
治療費
Bさんは労災保険からの療養補償給付の支給を受けて入通院を行っていましたから、
Bさんに直接何か支払いをしなければならない治療費があったわけではありませんでした。
したがって治療費として会社に対して請求できる金額は0円でした。
入院雑費
Bさんは今回の労災事故に伴う怪我で1か月ほど入院をしていましたから、
1500円×入院日数を入院雑費として請求することができます。
通院交通費
要した実費について請求ができます。
通院付添費
Bさんは事故時未成年で、しかも足を怪我しており歩行は松葉杖をついていました。
『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』でも「症状または幼児等必要と認められる場合には被害者本人の損害として肯定される」とされています。
東京地方裁判所平成28年1月22日判決(交通事故民事裁判例集49巻1号55頁)では、症状固定時76歳の女性(左股関節の機能障害について10級11号認定)について、
退院後も歩行をするためにはT字杖を使用する必要があり、公共機関を利用した通院は困難で、車での付添が必要であったとして通院付添費を肯定しています。
今回のBさんの事例では、単独での通院は可能であるとして認定はされませんでした。
装具費用
Bさんは松葉杖を利用していますから、その杖の購入費用も損害として認められるべきです。
また、将来にわたっても継続的な使用(相当期間での交換)が必要と認められる場合には、将来にわたって要する費用についても原則として全額認められることになっています。
休業損害
Bさんは事故時一次請けの会社で勤務をされていて収入を得られていました。
しかし、今回の労災事故のせいで勤務ができなくなり、収入が途絶えてしまいます。
事故に遭わなければ勤務を継続できていたわけですから、この途絶えた収入分も損害として認められるべきです。
給与所得者の休業損害は事故前3か月間の給与を実日数(または実稼働日数)で割った日額に、実休業期間(または実休業日数)をかけて算出することが多いです。
ただし、労災保険から休業補償給付の支給があっている場合は差し引きがありますので注意が必要です。
逸失利益
逸失利益の計算は先ほど少し出てきましたが、
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数)です。
このうち労働能力喪失率は、今回障害診断書の訂正などが功を奏し、準用8級が認定されていますから、8級に対応する45%が採用されます。
また、労働能力喪失期間は原則として67歳までとされておりますから、Bさんの症状固定時の年齢から67歳までの期間(に対応するライプニッツ係数)を採用することになります。
Bさんの場合に問題となるのが基礎収入です。
Bさんは事故時月額約15万円ほどの収入でした。
とはいえBさんはまだお仕事を始められたばかりで若いですし、今後事故に遭わずお仕事を続けられていれば収入はどんどん上がっていた可能性が高いです。
にもかかわらず将来にわたっての50年近い期間に得られる収入の基礎を、現在のBさんの収入とするのは実態に則していません。
『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』でも、「若年労働者(事故時概ね30歳未満)の場合には、~全年齢平均の賃金センサスを用いるのを原則とする。」とされています。
これをもとに全年齢平均の賃金センサスを用いるべきだと主張したところ、全年齢中学卒計の賃金センサスでの基礎収入を認定してもらうことができました。
なお、先ほども述べたように、逸失利益は労災保険から支払われる障害補償給付との差し引きがあります。
傷害慰謝料(入通院慰謝料)
傷害慰謝料は受けた怪我の苦痛や、入通院を余儀なくされることによるストレス等に対する慰謝料です。
これは入院日数や通院期間をもとに基準が定められています(いわゆる赤い本基準)。
Bさんの件もこの赤い本基準をもとに計算することになるのですが、
Bさんは事故発生から入院までの期間ギプス固定をしていました。
ギプス固定のように安静を要する自宅療養期間については入院期間と同視することができますので、
それを考慮したうえで計算した傷害慰謝料(入通院慰謝料)の請求を行いました。
後遺症慰謝料
これも先ほど述べたように、認定された後遺障害等級8級に対応する830万円を請求することになります。
その他
その他、損害賠償請求を行うために取り付けを行ったカルテ取得費用などを請求することができます。
示談に限り過失相殺の主張なしで、合計約6000万円での示談解決!
以上のような損害費目についてそれぞれ計算を行ったうえで、
元請けの会社の代理人弁護士と協議した結果、
事故態様については相手方の認識と齟齬があるものの、早期円満解決のために示談で解決できる場合には過失相殺の主張をしないという条件で、
約6000万円での示談解決をすることができました(労災保険給付を除く。)。
裁判になれば裁判基準満額を得られる可能性もありますが、過失相殺についての争いは避けられませんから、
今回のBさんの件はとても良い示談解決になったと言えるでしょう。
依頼者の声(Bさん 10代・男性・会社員・福岡県在住)
事故に遭ったばかりの時は不安ばかりでどうすれば良いのかわからずにいましたが、
木村先生に親身に相談に乗っていただき依頼することに決め、病院や相手方との交渉などいろいろな場面でご尽力いただき感謝しています。
すごく心強かったです。
不安の中、木村先生やスタッフの方にいつも丁寧な説明や対応をしていただいて、
今回先生に依頼ができて本当に良かったと思っています。
何もないことが一番なのですが今後もし何か困ることがあった場合には先生方にご相談をさせていただきたいと思います。
本当にこの度はありがとうございました。
労災被害者専門弁護士木村治枝のコメント:労災被害者専門弁護士に依頼することで賠償金額が大きく増額することがあります
今回のBさんの事例では、まず末梢神経損傷による弛緩性麻痺で可動域制限が生じている場合に、
障害等級の認定を他動値ではなく自動値で行うことになっているという点から、
主治医に障害診断書に追記を依頼したことが大きなポイントでした。
また、基準を実態に沿って適用することにより、申し分ない金額での示談解決ができた点も良いポイントでした。
労災事故被害に遭われた方は、後遺障害等級や損害額算定基準を熟知し、
被害者の方お一人お一人の気持ちを適切に反映してくれる弁護士に依頼することをお勧めします。