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後遺障害診断書の修正で後遺障害等級8級獲得【大腿骨頸部骨折】

Aさん 50代・女性・会社員

8級 医師面談 大腿骨骨折 後遺障害診断書修正 通勤災害

後遺障害診断書

通勤災害によって右大腿骨頸部骨折の重傷を負ってしまったAさん。手術により人工骨頭を入れることになりました。股関節が動きづらいという後遺症も残ってしまいますが、後遺障害診断書にそのことが書かれていません。この診断書で申請をして、ちゃんとした後遺障害等級が認定されるのでしょうか?

Aさんより依頼を受けた弁護士小杉晴洋は、後遺障害・後遺症に関する事例を1,000件以上解決してきた後遺障害専門の弁護士です。このページでは後遺障害・後遺症に強い弁護士が、Aさんの事例で、どのように後遺障害等級認定を獲得したのかについて紹介していきます。

なお、当事務所では、労災事故被害に遭われた方の後遺障害等級について無料査定を行っております。気になる方は、障害等級の無料査定のページをご覧ください。

 

この事例の後遺障害等級認定のポイント

  1. 大腿骨骨折事例の後遺障害等級認定基準の把握
  2. 後遺障害診断書の分析
  3. 整形外科医との医師面談の準備
  4. 後遺障害診断書の修正

 

事例紹介(通勤災害)

Aさんは、50代の会社員女性です。

通勤災害に遭い、右大腿骨頸部骨折の傷害を負ってしまいました。

入院・通院によるリハビリを経て整形外科の先生より後遺障害診断を受けますが、その内容がスカスカで、「この後遺障害診断書でよいのかしら?」という疑念が生まれます。

そこで、後遺障害等級認定に強い弁護士を探すことにしました。

 

弁護士小杉晴洋による無料法律相談

弁護士小杉晴洋の法律相談

Aさんの法律相談には、弁護士小杉晴洋が応じましたが、Aさんの懸念どおり、内容の薄い後遺障害診断書となっていました。

そこで、Aさんに対して、後遺障害診断書の修正が必要である旨を説明し、Aさんからのご依頼を受けることになりました。

なお、Aさんは弁護士費用の支払を気にしていましたが、小杉法律事務所では労災被害に遭われた方については、法律相談料金無料・着手金も無料とさせていただいております。

Aさんからも、安堵した表情でご依頼をいただけました。

 

右大腿骨頸部骨折の事例の後遺障害等級

後遺障害等級

障害部位

右大腿骨頸部骨折というのは、障害部位としては、労災補償障害認定基準第3章第10節「下肢」にカテゴライズされています(労災補償障害認定必携第17版264頁以下)。

従いまして、Aさんの後遺障害等級の見立てを検討するにあたっては、この「下肢」の後遺障害等級認定基準を把握する必要があります。

障害種別及び障害系列

更に下肢の障害種別としては、①欠損又は機能障害(系列番号26)・②変形障害(系列番号27)・③短縮障害(系列番号28)・④醜状障害(系列番号29)があります。

従いまして、Aさんの後遺障害等級の見立てを検討するにあたっては、これら4つの後遺障害等級該当性を1つ1つ検討していくことになります。

なお、Aさんには、大腿部の痛みの後遺症もありましたが、痛みや痺れといった症状は、労災補償障害認定基準第3章第5節「神経系統の機能又は精神の障害」(系列番号13)にカテゴライズされています(労災補償障害認定必携第17版137頁以下)。

脳やせき髄の損傷といった中枢神経の障害ではなく、大腿部の痛みといった局部の神経症状の場合は、障害等級第12級の12か、14級の9のいずれかの障害等級認定がなされますが、上述した下肢の障害種別①~④というのは、障害等級12級を超えるものが複数存在し、これらが認定されると、複数観点や通常派生関係といった理由で局部の神経症状の障害等級認定はなされません(労災補償障害認定必携第17版82~83頁)。

RSD・CRPSといった傷病がある場合は別ですが、Aさんの事例ではRSD・CRPSといった事情もありませんでしたので、大腿部の痛みの検討の前に、①欠損又は機能障害・②変形障害・③短縮障害・④醜状障害の障害等級該当性を検討するべきということになります。

下肢(股関節)機能障害

Aさんには、足を切断するような事情はありませんでしたので、欠損障害を検討する必要はなく、下肢の機能障害を検討することになります。

また、Aさんの後遺症の内容は、股関節に関するもののみで、膝関節・足関節は問題がなかったため、股関節に関する最も重い後遺障害等級である第8級の7「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」に該当するか否かを検討していくことになります。

後遺障害等級第8級の7「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」に該当するためには、a「関節が強直したもの」、b「関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの」、c「人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域制限が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの」といった3類型のいずれかに当てはまらないといけません(労災補償障害認定必携第17版272頁以下)。

股関節が強直したものといえるか

関節の強直とは、関節の完全強直又はこれに近い状態にあるものをいうと定義されています。ここでいう「これに近い状態」というのは、関節可動域が、原則として健側(≒怪我をした側ではなく健康な側という意味)の関節可動域角度の10%程度以下に制限されているものをいい、「10%程度」とは、健側の関節可動域角度の10%に相当する角度を5度単位で切り上げた角度とするとされています(労災補償障害認定必携第17版285頁)。

分かりづらいですが、Aさんの例で言うと、Aさんの左股関節(健側)が140度動いていたとすると、その10%というは14度となります。そして5度単位での切上げが行われますので、「10%程度」というのは15度ということになります。

従いまして、この例で言うと、Aさんの右股関節の可動域角度が15度以下となっている場合は、「関節が強直したもの」として障害等級第第8級の7に該当することになります。

Aさんの後遺障害診断書には股関節の可動域角度が記載されていなかったため、後遺障害診断書上の数値は分かりませんでしたが、左右両方の股関節がどのくらい動くか(屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋)について実際に見てみたところ、左股関節の10%程度以下には大きく届かなかったことから、関節強直による後遺障害等級8級の認定を目指す方針は却下となりました。

股関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるものといえるか

下肢関節の完全弛緩性麻痺というのは、小杉法律事務所の解決事例で言うと腓骨神経麻痺が多いですが、これは、神経が切れてしまって、そこから下の関節が自分では動かしづらくなってしまうという症状が出るケースをいいます。

診断書などを分析した結果、完全弛緩性麻痺に該当するような事情が一切なく、Aさんの症状としても、股関節から下の関節が自分では動かしづらくなるなどの事実もありませんでしたので、完全弛緩性麻痺による後遺障害等級第8級の認定を目指す方針も却下となりました。

人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域制限が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているものといえるか

Aさんは、右股関節に人工骨頭をそう入置換していましたので、「人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節」という要件には該当します。

そして、その人工骨頭そう入置換が、当該業務災害や通勤災害に起因するものではなくていけませんが、Aさんの既往症・既存障害を調査した結果、通勤災害に起因するものと評価できました。

次に股関節の可動域制限についてですが、前述のとおり後遺障害診断書上の数値は分かりませんでしたが、右股関節は左股関節の半分も動かないという程度の評価は可能であって、ここの要件さえクリアできれば、「人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域制限が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの」として後遺障害等級8級の認定を受けることができるという見立てとなりました。

なお、Aさんは人工骨頭をそう入しているため、通勤災害との因果関係の証明さえできれば「関節の機能に著しい障害を残すもの」として障害等級第10級の10の認定を受けることができますが、目標はあくまで第8級の7という設定にしました。

動揺関節・習慣性脱臼・弾発股について

労災保険における障害等級基準で明示されていない股関節の機能障害(準用等級といいます。)で動揺関節・習慣性脱臼・弾発股というものがあります。

習慣性脱臼及び弾発股については、認められたとしても準用12級にしかならないことと、Aさんの後遺症の内容とは異なることから却下としました。

また、動揺関節については、最高等級で準用8級というものがありますが、常時硬性補装具を必要とするといった要件を満たさないため、これも却下としました。

下肢変形障害

右大腿骨頚部骨折の場合の下肢変形障害は、まず常に硬性補装具を必要としているか否かで後遺障害等級が分かれます(労災補償障害認定必携第17版273頁)。

常に硬性補装具を必要としている場合には、「1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」として障害等級第7級の10を検討することになりますが、Aさんは硬性補装具を付けていませんでしたので、後遺障害等級7級の認定を目指す方針は却下となります。

また、大腿骨の骨幹部・骨幹端部にゆ合不全を残すものについては、障害等級第8級の9「1下肢に偽関節を残すもの」に該当することになりますが、Aさんの大腿骨の画像(MRI・CT・XP)を確認したところ、偽関節の所見は確認できませんでした。この点について整形外科医に確認する選択もありますが、前述のとおり、機能障害による障害等級8級の7の該当確率の方が高いと見込んでいて、変形障害と合わせて障害等級評価されることもないため、変形障害にて後遺障害等級8級の認定を目指す方針は却下としました。

加えて、大腿骨が15度以上屈曲して不正ゆ合したもの・大腿骨の骨端部にゆ合不全を残すもの・大腿骨の骨端部のほとんどを失ったもの・大腿骨の直径が2/3以下に減少したもの・大腿骨が外旋45度以上又は内旋30度以上回旋変形ゆ合しているものについては、「長管骨に変形を残すもの」として障害等級第12級の8に該当することになりますが、前述のとおり、機能障害にて後遺障害等級8級を目指す方針となったため、変形障害にて後遺障害等級12級の認定を目指す方針は却下としました。

下肢短縮障害

Aさんの左右の脚の長さに5㎝以上の差が生じていれば、「1下肢を5センチメートル以上短縮したもの」として障害等級第8級の5に該当する可能性が出てきますが、Aさんの画像データをパソコンに取り込んで、左右の足の長さを測定してみたところ、5㎝以上の差は生じていませんでした。

3㎝以上の差や1㎝以上の差でも、それぞれ障害等級第10級の7や第13級の8といった後遺障害等級が用意されていますが、Aさんの脚の長さに左右差はほとんど見られず、また、前述のとおり、機能障害にて8級を目指す方針となったため、短縮障害にて後遺障害等級認定を目指す方針は却下としました。

下肢醜状障害

Aさんには、手術痕が右大腿部に残っていて、下肢の醜状障害も検討することになります。

しかしながら、下肢の醜状障害というのは要件が厳しく、てのひらの大きさの醜状があったとしても後遺障害等級14級にしかなりません。

しかも、Aさんの手術痕というのは、Aさんのてのひらの面積よりも小さい面積のものでしたので、下肢の醜状障害で目指す方針となったため、変形障害にて後遺障害等級の認定を目指す方針は却下としました。

後遺障害等級の方針まとめ

以上の分析を経た結果として、ターゲットとする後遺障害等級を第8級の7「人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域制限が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの」に定め、そのための方針として、医師面談を実施し、①通勤災害により右股関節に人工骨頭をそう入置換することになったこと、②Aさんの股関節可動域は左右1/2以上の差が生じていること、③Aさんの右股関節の動きづらさが通勤災害に起因するものであることについてお伺いし、その旨、後遺障害診断書を修正してもらうということにしました。

 

後遺障害診断書の修正と後遺障害等級認定

弁護士小杉晴洋

整形外科医との面談準備

小杉法律事務所では、数多くの整形外科医との面談実績がありますが、Aさんの主治医の先生と面談するのは初めてでした。

初めて医師面談を実施する先生の場合、事前に経歴や執筆論文を調査しておく必要があります。

この調査をきちんと行っておくと、医師面談での医師との会話が弾み、医学的な見解を聞きやすくなることが多いためです。

また、当然のことですが、Aさんの診断書の内容・カルテ内容・画像所見なども把握して臨む必要があります。

お医者さんはとてもお忙しい(+プライドが高い方が多い)ので、調査不十分で臨むと、門前払いされてしまったり、ろくな話もしてもらえないといったことがありますので注意が必要です。

整形外科医診察への弁護士同席

医師面談は、弁護士のみで行ったり、弁護士とパラリーガルのみで行うことが多いですが、依頼者からの希望があり、かつ、面談先の先生からの許可を得た場合は、依頼者の方にも同席していただいております。

ただ、Aさんのケースでは、Aさんのお話を元に既往症・既存障害に関係なく通勤災害起因の後遺障害が生じていることを後遺障害診断書に書いていただく必要性や、左右の股関節の屈曲運動・伸展運動・外転運動・内転運動・外旋運動・内旋運動の可動域測定をしていただかなくてはいけなかったため、Aさんに医師面談の同席をお願いし、主治医の先生の許可をもらいました(正確には、Aさんの「診察」に弁護士が同席している形をとっています。)。

主治医の先生は、とても話しやすい先生で、大腿骨頸部骨折の医学的な話や、人工骨頭そう入・股関節の可動域制限のメカニズムについて分かりやすく教えてくださいました。

ただし、後遺障害認定基準については、あまりご存知なかったようでしたので、Aさんの適切な後遺障害等級の認定のためには、後遺障害診断書を修正していただく必要があるという点について弁護士小杉から述べさせていただきました。

そうしたところ、こちらの要望を理解してくださり、通勤災害とAさんの後遺障害との関係、左右の股関節の屈曲運動・伸展運動・外転運動・内転運動・外旋運動・内旋運動の可動域測定値、Aさんの可動域制限と通勤災害との関係について後遺障害診断書に追記いただけることになりました。

後遺障害等級8級認定

医師面談を経て後遺障害診断書を修正してもらい、当該診断書をもとにして後遺障害等級申請を行いました。

そうしたところ、見立てどおり、「人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域制限が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの」として後遺障害等級8級の認定を受けることができました。

 

依頼者の声(Aさん・50代女性・会社員)

依頼者の声

漠然と「この後遺障害診断書で大丈夫なのだろうか?」という不安のもと、小杉弁護士に相談しましたが、相談して良かったと思っています。

小杉先生がお医者さんとお話していた内容は、聞いていても難しくてよく分かりませんでしたが、このままの後遺障害診断書で申請をしていたら、私の後遺症が適切に評価されていなかったというのは法律相談で理解していましたので、そのためにご尽力いただいたと思っています。

感謝申し上げます。

 

弁護士小杉晴洋のコメント:骨折事例の後遺障害等級獲得には専門性が必要です

骨折事例というのは、様々な後遺障害等級について、診断書やカルテや画像などの医学的証拠と突き合わせながら、その認定可能性を探っていく作業が必要となります。

Aさんの事例のように、医師面談が必須の事例や、後遺障害診断書の修正が必要な事例もございます。

こうした作業は、労災の被害者側専門の弁護士でないと困難ですので、業務災害や通勤災害で骨折被害に遭われてしまった方については、労災の被害者側専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

小杉法律事務所では、無料の法律相談を実施しており、また、労災被害者の方については原則として着手金も頂きませんので、お気軽にお問い合わせください。

法律相談(無料相談)の流れについてはこちらのページをご覧ください。

骨折事例の解決法についてはこちらのページをご覧ください。

賠償金・障害等級の無料査定についてはこちらのページをご覧ください。

 

この記事の執筆者

小杉 晴洋
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数1000件超。

経歴
小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身・福岡市在住。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(当時。現「神奈川県弁護士会」)に登録後(損害賠償研究会所属)、福岡県弁護士会に登録換え(交通事故委員会所属)。

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