労災事故の解決実績

業務災害 死亡 遺族(補償)給付

過労による死亡事案において、未払い残業代の立証より労災の遺族補償年金の支給額を増額、会社から賠償金約6000万円を獲得して示談解決

労災被害者Lさん(50代、男性、会社員、福岡)

急性大動脈解離 過労

休業損害・休業給付

今回ご紹介するのは、過労で亡くなられたLさん(50代、男性、会社員、福岡)の解決事例です。

ご依頼を受けた弁護士の木村治枝は、

審査請求により労災の遺族補償年金の支給額を増額し、

損害賠償金約6000万円を獲得して示談解決しました。

弁護士はどのように本事案を解決したのでしょうか?
交通事故被害者専門弁護士が解説します。

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ご依頼に至るまでの経緯

Lさんは会社員として朝から晩まで長時間働いており、家ではあまり仕事の話をしない方でした。
そんなLさんが、お亡くなりになる前には、「きつい」と繰り返し仰っていました。
また、Lさんは健康診断で高血圧とも診断されていました。

Lさんはそれでも仕事を続けていらっしゃいましたが、ある日、会社で仕事中に昏倒し、救急搬送されました。
ご家族様が駆け付けた時は意識があり、病院から検査すると説明を受けて待っていたところ、突如容体が急変し、Lさんはお亡くなりになりました。
診断は、急性大動脈解離でした。

ご遺族様は、会社に労災申請をしたいと伝えましたが、会社は残業時間が足りないから労災は通らないと言って申請すらしてくださいませんでした。そこで、労働組合に相談したところ、組合が必要書類を準備してくださり、労災申請はすることができました。その後、労災の認定もおりました。

ご遺族様は、会社の労働時間の管理が杜撰だったと感じており、仕事が原因で亡くなったと考えていました。
そこで、会社に対する賠償請求が可能か、弁護士に相談することにしました。

弁護士木村治枝の法律相談

過労の事案では、労災資料や会社から開示された資料、ご遺族様がお手持ちの資料などを基に、急性大動脈解離を発症するような過重業務をさせていたということを主張・立証し、会社の責任を追及していくことになります。
ただ、Lさんは事故前に高血圧と診断されていたため、会社側から過労ではなく高血圧が原因ではないか」と反論される可能性が考えられました(素因減額)。そのため、反論に備えて、医療記録の確認や裁判例の調査なども行っていきます。

また、相手方となる会社があまり大きい企業ではなかったため、ご遺族様は「請求しても倒産してしまい、何も支払ってもらえないのでは」と懸念されていました。
しかし、企業は保険に加入していることも多いため、そこから補償を受け取れる可能性があります。
会社のお話では保険に加入はしていそうでしたので、責任が認められれば支払いの可能性はあると考えられました。

さらに、Lさんには未払いの残業代があるようでしたので、損害賠償請求に加えて、未払い残業代も会社に請求することになりました。
そして、労災手続きにおいても、未払いの残業時間があることが認められれば、ご遺族様が受け取れる遺族補償年金の金額が増額される可能性があります。
そのため、労災の審査請求も行うべきだと考えられました。

 

以上のように、法律相談では、請求できるものや今後の流れなどを中心にご案内させていただきました。

その後、何度かご相談をいただき、弁護士と十分に方針のすり合わせや契約内容の確認を行ったのち、「自分達では対応が難しいと思うので、弁護士にお願いしたい」とのご連絡をいただきました。
ご遺族様は気丈に振舞われていらっしゃいましたが、それでもLさんのお話をされるときは堪えきれず涙を流されていました。
お話をお伺いした弁護士としても、過労が原因だろうという見解であり、Lさんと残されたご家族様のためにできる限りのことをしたいと決意し、ご依頼を受けることになりました。

基礎給付日額に関する審査請求

 

労災では、Lさんの収入を基に基礎給付日額を算出し、それを基に遺族補償年金の支給金額を決定しています。
(基礎給付日額についての詳細はこちらのページへ。)

そして今回は、労働基準監督署が、未払い残業代を把握できていないまま、基礎給付日額を算出している可能性がありました。
そのため、未払いの残業代を含めて再計算していただくことで、基礎給付日額が上がり、遺族補償年金の支給額も増額される可能性があります。

 

そこで、弁護士はまず労災の記録開示を行い、労働基準監督署がLさんの勤務時間や収入をどのように認定し、基礎給付日額をどう算出したのかを確認しました。
その結果、やはり未払い残業代を含まない形で基礎給付日額が算出されていましたので、未払い残業代を含めて再計算すべきだと主張し、審査請求を行いました。
審査請求では、開示された労災資料や、Lさんが持っていたデータ、Lさんの日記などをもとに、基礎給付日額に含まれていない残業があることを立証しました。

その結果、残業の一部が認められて日額が上がり、ご遺族様が受け取る遺族補償年金を増額できました

 会社への請求

その後は会社への賠償請求と未払い残業代の請求に進みました。

未払い残業代については、審査請求で労働局が認めていたこともあり、早期にお支払いをしていただくことができました。
一方、賠償請求については、相手方が労災補償保険法附則64条に基づく減額主張と、②高血圧に基づく素因減額の主張をしてきました。

  • 労働者災害補償保険法附則64条
    同条は、労災事故で年金等を受け取っている場合には、年金の受給が終わるまでの期間、会社は賠償金の一部の支払いを猶予されると規定しています。そして、その後の年金によって、猶予分の金額が補填されれば、会社はその分の賠償金を支払う義務がなくなります。これは、年金と賠償金の重複受け取りを避けるための規定です。

相手方はこの規定に基づき、一部は支払いを猶予されるべきだと主張してきました。
これについては最高裁でも認める判決が出ているため、争うことは難しいと考えられました。

一方、②高血圧に基づく素因減額については、資料なども踏まえて、死亡と高血圧には因果関係がないと反論していきました。
その後、素因減額と全体の支払い金額の交渉を繰り返した結果、最終的にはこちらの主張が認められ、
素因減額なし、賠償額約6000万円で示談となりました。

依頼者様の声

事故当初は本当に混乱しており、会社は労災申請もしてくれず、色々と本当に不安でしたが、先生やスタッフの方の支えで無事にここまでこれました。

自分達だけでは対応できなかったと思います。
これでようやく心に区切りをつけられます。

長い間本当にありがとうございました。

弁護士木村治枝のコメント

本件は、賠償請求だけでなく、基礎給付日額の増額に関する審査請求や、未払い残業代の請求などいろいろな対応を行った事案でした。

特に、基礎給付日額の増額については、遺族年金の支給金額に直結する問題であり、ご遺族様にとっては一生に関わるものです。そのため、無事に増額が認められたことで、ご遺族様に適切な補償を受け取っていただけることになり、心より安堵いたしました。

また、賠償請求についても、裁判例では高血圧の既往症で素因減額をされているものもございましたので、素因減額なしで解決できたことは何よりでございました。
今回の事案を通じて、あきらめず粘って主張していくことの大切さを再確認いたしました。

 

本件のように、弊所は労災案件に力を入れており、多数の解決実績がございます。

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当該解決を行った弁護士木村治枝の経歴やその他解決事例等についてはこちら。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。