労災コラム

解決事例

骨折

【通勤災害解決事例】医師面談により障害診断書を修正してもらい、障害等級6級認定

2020.08.13

【通勤災害解決事例】医師面談により障害診断書を修正してもらい、障害等級6級認定

解決事例のポイント

① 自身にも過失のある通勤災害の事故では、加害者や加害者の保険会社に治療費を支払ってもらうのではなく、労災の療養給付により治療を行いましょう。
② 自身にも過失のある通勤災害の事故では、加害者や加害者の保険会社に休業損害を支払ってもらうのではなく、労災の休業給付により治療を行いましょう。
③ 医師は障害等級認定のプロではないので、障害診断書に書き漏れがあれば積極的に修正してもらいましょう(障害診断書修正により併合6級獲得)。
④ 障害等級の方針を立てる際は相当と併合の関係も意識しましょう。
⑤ 約7000万円での高額示談解決

通勤災害で被害者にも過失があるケースでは療養給付や休業給付を使うべき(費目間拘束のメリット)

福岡市に住む30代の会社員男性Aさんは、バイクでの通勤の途中、青信号のため交差点を直進しようとするにあたり、対向から右折進行してきた四輪車と衝突し、大怪我を負ってしまいます。

Aさんの会社の社長は、Aさんが通勤災害に遭ったことに対し、同情的ではなく、むしろ、仕事の穴が生じてしまったため、大変怒っていました。

入院治療のため、お給料が入らなくなることから、Aさんはとても不安になり、弁護士に法律相談することにします。

そうしたところ、交通事故の相手方である四輪車の運転者やその保険会社から治療費や休業損害を払ってもらうのではなく、労災の療養給付と休業給付の申請を行った方が良いとのアドバイスを受けることになりました。

なぜ、加害者側から支払ってもらうよりも労災を利用したほうが良いのかというと、Aさんにも過失が取られてしまうことがあるからです。

交差点を直進するバイクと対向から来た右折四輪車とが衝突した場合、基本的な過失割合はバイク15:四輪車85とされています。

Aさんの治療費は、最終的に約1000万円かかったのですが、これは労災の治療費計算方法によるからであって、交通事故の相手方保険会社に治療費を支払ってもらったとなると、自由診療となって2倍弱の治療費計算となってしまいます。

わかりやすく自由診療治療費2000万円ということで計算すると、交通事故の相手方保険会社が2000万円を病院に振り込んで支払うことになりますが、本来保険会社が支払うべきは過失割合85%分である1700万円のみでいいはずです。

しかしながら、85%だけ保険会社が払い、残りの15%を被害者本人が払うとなると病院側の手続が煩雑となるため、保険会社は1700万円ではなく、2000万円全額を病院に支払うという運用が取られることが多いです。

払いすぎた300万円はどうなるかというと、後の示談交渉の際に、慰謝料や休業損害など他の損害費目から引かれれてしまうということになっています。

こうした慰謝料額などの減額を回避するための手段が労災保険の利用ということになります。

療養給付による治療費支払の場合ですと、自由診療よりも治療費額が低くなるというメリットもありますが、それよりも、「費目間拘束」というルールが被害者にとって大きなメリットです。

具体的には、療養給付の場合であっても、過失割合に関係なく、病院に対して全額の治療費が支払われますが、被害者の過失分について、慰謝料などの他の損害費目から後で減額するということが禁止されているのです。

したがって、保険会社に治療費を払ってもらった時のように慰謝料額などの他の損害費目から300万円が引かれるということはなくなり、被害者の方が受け取れる最終的な金額が多くなることになります。

この「費目間拘束」は休業損害の場合も同様ですので、被害者にも過失がある場合には、療養給付のみならず、休業給付も利用した方が良いということになります。

そこで、Aさんにも、療養給付や休業給付を利用してもらうことにしました。

診断書の修正

Aさんは障害診断書を書いてもらっていましたが、Aさんの症状からして修正できるのであればした方が良い事案であると考えました。

そこで、主治医の先生にアポイントを取り、医師面談を実施して、診断書の修正をお願いすることにしまいた。

まず、最初に作成された診断書の診断名には、脛腓骨開放骨折と記されていましたが、他にも、中足骨骨折や、右足関節拘縮、腓骨神経麻痺もあったため、これらも診断名として挙げてもらいました。

次に、Aさんの症状として右足関節痛の記載しかありませんでしたが、他のAさんがおっしゃる自覚症状も追記してもらいました。

そして、画像所見や検査所見、偽関節となっていることや足指の可動域制限についてもそれぞれ追記していただきました。

障害等級併合6級の認定

偽関節 第8級の9号(短縮障害を含む。)

偽関節で障害等級第8級の9が認定されました。

なお、Aさんには短縮障害(障害等級13級)も残っていましたが、これは通常派生関係にあるものとして、偽関節の後遺障害等級の中で評価されます(労災補償障害認定必携第17版83頁参照)。

足関節の著しい機能障害 第10級の10(右足関節痛を含む。)

Aさんの右足関節の背屈・底屈の動きは、左足関節のそれと比べると1/2に制限されていたことから、「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」として、障害等級第10級の10が認定されました。

なお、Gさんには右足関節痛(障害等級12級)も残っていましたが、これは通常派生関係にあるものとして、機能障害の後遺障害等級の中で評価されます(労災補償障害認定必携第17版83頁参照)。

右足指全部の用廃 第9級の11

Aさんの足指の可動域は、自動運動にて、すべての右足指が左足指と比べて1/2しか動かなくなっていたので、「1足の足指の全部の用を廃したもの」として障害等級第9級の11が認定されました。

ここで重要なのは、自動運動(自分で動かすこと)の左右比較で、障害等級の認定がなされたことです。

可動域制限による機能障害の障害等級認定では、他動運動(医師が動かすこと)の左右比較で行うことが原則であるとされています(労災補償障害認定必携第17版288頁参照)。

Aさんは、他動運動では、すべての右足指が左足指と比べて1/2しか動かなくなっていたという状態ではなかったので、本来は障害等級第9級の11の認定はなされません。

しかしながら、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となり、他動では関節が稼働するが、自動では可動できないという場合は、「他動運動による測定値を採用することが適切でないもの」として捉えられていて、例外的に、自動運動の比較によって後遺障害等級の認定を行うものとされています(労災補償障害認定必携第17版288頁参照)。

腓骨神経麻痺の追記をお願いしていたのはこのためで、腓骨神経麻痺を医学的に説明してもらうことにより、自動運動の比較にて障害等級の認定を行うことが可能になり、障害等級9級の11の認定をしてもらえることになります。

障害等級の相当処理と併合処理

障害等級13級以上の等級が複数ある場合はその中で1番重たい等級が1つ繰り上がり、障害等級8級以上の等級が複数ある場合はその中で1番重たい等級が2つ繰り上がるとされています(労災補償障害認定必携第17版71頁参照)。

この手法を「併合」といいます。

Aさんのケースでは、障害等級第8級の9、第10級の10、第9級の11の3つの後遺障害等級が認定されていて、8級以上の障害等級は1つしかなく、他方で13級以上の障害等級は複数あることから、この中で1番重い第8級の9が1つ繰り上がり併合7級になりそうです。

しかしながら、併合の処理をする前に、併合の方法を用いて「準用」の処理をしなければなりません。

具体的には、右足関節の機能障害と右足指の機能障害とは、後遺障害等級認定上は別系列として扱われていますが、同じ右下肢内の機能障害の話ですので、このような場合には、併合の方法を用いて1つの準用等級を定めます(労災補償障害認定必携第17版75,85頁参照)。

Aさんの場合、右足関節機能障害第10の10と右足指関節機能障害第9級の11とが、同じ右下肢内の機能障害の話ですので、併合の方法を用いて重い方の第9級の11を1つ繰り上げ、準用8級という1つの障害等級とします。

従いまして、Aさんの障害等級は、偽関節の8級の9と、右下肢機能障害の準用8級の2つになるわけです。

そうすると、障害等級8級以上の等級が複数ある場合はその中で1番重たい等級が2つ繰り上がるというルールを使うことになり、2つ繰り上げて併合6級ということになります。

示談

無事併合6級の認定を受けることができ、その結果に基づいて示談が成立し、約7000万円を獲得することができました。

この記事の執筆者

小杉 晴洋
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災などの損害賠償請求解決件数1000件超。

経歴
小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身・福岡市在住。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(当時。現「神奈川県弁護士会」)に登録後(損害賠償研究会所属)、福岡県弁護士会に登録換え(交通事故委員会所属)。